暗号通貨マネロン新規制、利用者情報の共有に課題
世界の金融機関は、独自の安全なメッセージ・システム「SWIFT(国際銀行間通信協会)」を使い、金融取引に関する情報を交換してマネーロンダリング規則を遵守している。現在、暗号通貨交換は規制当局から同様のシステムを構築するように圧力をかけられているが、その方法はまったく明確ではない。
昨年6月、影響力のある政府間マネーロンダリング監視組織、金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)は業界全体に衝撃を与えた。世界中の37の管轄区域に、FATF(「ファットF」と発音)が「仮想資産サービス・プロバイダー(Virtual Asset Service Providers)」と呼ぶ、物議を醸す新しい規則を課すように勧告した時だった。この規則は特定のしきい値を超える送金の送信者と受信者の識別情報の提供を取引所に要求するもので、「トラベル・ルール」と呼ばれる米国の銀行規制に似ている。
批評家は、新しい規則は厄介だと主張している。情報を共有するため、完全に新しい技術インフラの構築を業界に要求しているからだ。暗号通貨は仮名取引という性質上、たとえば顧客が別の取引所に送金している場合、(送信元の)取引所にとって(「受信者」は)必ずしも明らかではない。取引所が見ることができるのは文字と数字の羅列だけなので、送信者は自分が管理する別の(取引所の)ウォレットに送金しているのかもしれない。そのため、新しい規則に従うには、取引所はどうにかして各々を特定できるようにしなければならない。他にも、この規則がマネーロンダリングをする人を、規制するのが難しいサービスやツールを使うように駆り立てるという議論もある。それにもかかわらず、業界には、暗号通貨版のSWIFTネットワークのようなものを作成する以外に選択肢がない。さらに、業界は迅速に何かを考え出さなければならない。FATFの計画では、今年6月に進捗を評価することになっているからだ。
暗号通貨関連のニュースサイト「コインデスク(CoinDesk)」による規則対応に関する業界内部の詳細な調査によると、取引所同士がどのようにして相互に情報を送信するかは、いまだ厄介な問題だという。ブロックチェーンを使用するべきか、それとも従来の中央集権型の設計に依存すべきか。情報共有システムは商用製品か、あるいはオープンソース・ソフトウェアをベースにするべきか。取引所は複数の情報共有システム製品を効果的に使うべきか、それとも1つの製品を受け入れるべきか。コインデスクによると、現在開発中の製品は20以上あるという。
問題は純粋に技術的なことだけではない。取引所が顧客を特定する情報を交換する必要がある場合、欧州連合のGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)などのデータ・プライバシー法を遵守する必要もある。