NIST、超高速・超低消費電力の人工シナプスを開発
生物の構造を模倣した回路が、低消費電力の人工知能(AI)チップの製造に将来、貢献しそうだ。
米国国立標準技術研究所(NIST)の研究者が、磁気で制御する電気シナプスを開発した。人工の神経回路である。人間の脳にある神経回路と比べて数100万倍も高速に発火し、消費エネルギーは1000分の1。これまでに作られたどの人工シナプスよりも少ない。
複数の信号を収集し、必要に応じて電気パルスを発火する人工シナプスは、通常のプロセッサーにおけるトランジスターの代わりになるかもしれない。人工シナプスはニューロモーフィック・チップと呼ばれる、脳のように機能するデバイスを作り出せる。ニューロモーフィック・チップは現時点でAIを支えている人工ニューラル・ネットワークを、通常のチップよりも効率よく実行できる。今回の新しい人工シナプスによって、エネルギー効率をさらに高められることになる。
だが、新しい人工シナプスは、まだ大型のデバイスを作るためには使われていないので、実際に有用なチップが製造できるかどうかは定かではない。また、絶対零度に近い約-268℃の環境でしか動作できないので、実用的なコンピューティング・デバイスとして利用するにはまだ多くの課題が残っている。
- 参照元: Science Advances