400万ドルの遺伝子療法薬、世界一高い価格設定に波紋
ロイター通信によると、スイスの製薬会社ノバルティスが、新しい遺伝子療法に400~500万ドルもの大金を請求する可能性があるという。
未承認の新しい遺伝子療法は、1型脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療するもの。1型脊髄性筋萎縮症とは命にかかわる遺伝性疾患で、2万人に1人の確率で乳児期に発症する。新しい遺伝子療法では、生後すぐに薬を1回投与すれば発症を防げるとされ、真の治療法とも言える。
ノバルティスが発売する予定の遺伝子療法の技術は、ネーションワイド児童病院(Nationwide Children’s Hospital)からスピンアウトしたスタートアップ企業のアベックス(AveXis)が開発した。アベックスは、十数人の子どもに対して治験を実施している。2018年前半に、ノバルティスはアベックスを約90億ドルで買収した。買収によって少数の人が大金を手にしたが、それは同時に、この薬に驚くほどの価格が設定されることを意味していた。
ノバルティスは最終的な価格をまだ発表していないが、ロイター通信によると、アベックスのデイブ・レノン社長は電話取材で「400万ドルは大金だが、コスト効率に優れた価格だと考えています」と説明している。これまで1つの薬の価格としては、同じく遺伝子療法に使用するグリベラ(Glybera)の約100万ドルが最高だった。
なぜこれほど高価なのか? 希少疾患は、その名のとおり本当に稀な病気であり、製薬会社は事業の成功の観点から考える必要がある。一度しか投与する機会がない希少疾患の治療で企業が利益を得る唯一の方法は、非常に高い金額を請求することである。
ノバルティスには、今後、厳しい批判に直面するだろう。ある批評家がツイッターで、「人質を解放するために犯罪組織に払う身代金でも200万ドル程度が相場だ」と投稿している。