AIが描いた絵画がオークション初登場、43万5000ドルで落札
人工知能(AI)プログラムを使って描かれた肖像画が、クリスティーズのオークションで43万5000ドルで落札された。7000ドルから1万ドルとされた予想落札価格を遥かに上回る、驚くべき額だ。
AIが描いた肖像画がオークションにかけられるのは初のことだ。落札したのは匿名の人物である。今回の出来事は「AIアートが世界のオークションの舞台に登場すること」の兆しであると、クリスティーズは話している。
「エドモンド・ベラミーの肖像画(Portrait of Edmond Belamy)」というタイトルのこの作品は、競争式生成ネットワーク(GAN)と呼ばれるAIアルゴリズムの一種を用いて制作された。GANは2つのニューラル・ネットワークで構成する。生成モデル(generator)と呼ばれる一つ目のネットワークは、特定のデータセットに存在するパターンを探すよう訓練されてからコピーを生成する。2つ目の識別モデル(discriminator)と呼ばれるネットワークは、生成モデルの作品を評価し、オリジナルのデータとコピーの違いを見分けられたかどうかを判断した結果を返す。こうした処理が、コピーが基準を満たしているとみなされるまで繰り返される。
「エドモンド・ベラミーの肖像画」を制作したのはフランス人メンバー3人からなる芸術集団「オビアス(Obvious)」だ。オビアスは、アルゴリズムを作成したロビー・バラットをクレジットに表記しなかったとして非難されている。ロビー・バラットは、芸術家でありプログラマでもあり、オープンソース・ライセンスでGANのコードをGitHubで共有している人物だ。
「エドモンド・ベラミーの肖像画」は、誰が作成した作品だと考えればよいのだろうか。もっと広範に言えば、アルゴリズムを利用して芸術作品を生み出したとき、作品の所有権は誰にあるのだろうか。アルゴリズムを書いた人物なのか、それとも特定の目的にアルゴリズムを適用した人物なのか。今言えることは、AIを利用した芸術の分野には、取り組まなくてはならないことがまだまだ山積しているということだ。