がんを増殖させる300の遺伝子を同定、「汎がんアトラス」が公開
がんゲノム・アトラス(TCGA)・コンソーシアムの10年に及ぶ研究の成果である「パンキャンサー・アトラス(PanCancer Atlas)」は、医師が広範囲のがんをより正確に治療するのに役立つ遺伝子データバンクを公開している。
米国および全世界の150人の研究者は、過去10年間にわたり、腫瘍試料から抽出したDNA、RNA、タンパク質を苦心して解析してきた。解析の対象としたのは、33種の異なるがんタイプの患者、1万1000人以上に及ぶ。
こうしたデータから科学者たちは、腫瘍の増殖を促進する約300の遺伝子を同定した。併せて、解析した腫瘍試料のうち半数強は、すでに市場に存在する治療法が対象とする遺伝子突然変異を有することも発見した。こうした知見は、米科学誌『Cell(セル)』に4月5日に掲載された29編の論文で発表されている。
パンキャンサー・アトラスから得られた知見は、それぞれのがん患者により特化した個別治療を仕立てるのに使えるという。「この解析によって研究者らは、人体において腫瘍がなぜ、どこで、どのように発生するのかという点について、これまでになかった理解を得られます。より確かなデータに基づく治験と未来の治療が可能になるのです」とプロジェクトに資金提供した米国立衛生研究所(NIH)のフランシス・コリンズ所長は述べている。