KADOKAWA Technology Review
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1687日前
Google’s auto-complete for speech can cover up glitches in video callsグーグルがビデオ会議のイライラを解消、音声の途切れをAIで補完

対面でのやり取りにビデオ通話を使う人が多くなった現在、接続が途切れ途切れになり、以前にも増してイライラさせられるようになった。そこで、個々の話者の話し方を模倣して発言のスニペット(断片)を生成し、小さな隙間を埋めることで、途切れをスムーズにしてくれる人工知能(AI)が登場した。グーグルのチームが開発したこのテクノロジーは現在、同社のビデオ通話アプリ「デュオ(Duo)」で使われている。

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対面でのやり取りにビデオ通話を使う人が多くなった現在、接続が途切れ途切れになり、以前にも増してイライラさせられるようになった。そこで、個々の話者の話し方を模倣して発言のスニペット(断片)を生成し、小さな隙間を埋めることで、途切れをスムーズにしてくれる人工知能(AI)が登場した。グーグルのチームが開発したこのテクノロジーは現在、同社のビデオ通話アプリ「デュオ(Duo)」で使われている。

オンライン通話中、私たちの声はたくさんの小さな断片に切り刻まれ、パケットと呼ばれるデータブロックの形でインターネット上を通り抜けていく。パケットは多くの場合、相手方にごちゃごちゃになって到着するので、ソフトウェアでそれらを並べ替える必要がある。しかし、まったく届かないパケットもあり、それが原因で会話に不具合や途切れが生じる。これは通話状態がもっともよい時でさえ起こる。グーグルによると、デュオでの通話の99%で、ごちゃごちゃのパケットや失われたパケットの処理をする必要があるという。そうした通話の10分の1で、音声の8%以上が失われてしまう。

問題を解決するためにグーグルのチームは、同社のAI子会社であるディープマインド(DeepMind)が開発したテキストからリアルなスピーチを生成できるニューラル・ネットワークを発展させた。「ウェーブネットEQ(WaveNetEQ)」と呼ばれるこの新たなニューラル・ネットワークは、48の異なる言語それぞれで人間の声を100個録音した大規模なデータセットで訓練。訓練は、スピーチの短い部分を、人々の一般的な話し方のパターンに基づいてオートコンプリート(自動補完)できるようになるまで実施された。デュオは端末で通話を暗号化・復号化するため、ウェーブネットEQによる処理はクラウドではなくデバイス上で実行される。通話中、ウェーブネットEQは話者の声の特徴を学習し、発話スタイルと話している内容の両方に合った音声のスニペットを生成できるようにする。パケットが届かなかった場合には、その個所にAIで生成した音声が挿入される仕組み。

現時点では、ウェーブネットEQは単語やフレーズではなく、音節のみしか生成できない。しかし、グーグルがオンラインで公開した短いサンプルから判断すると、結果はかなり本物そっくりになりそうだ。1つの例では、ウェーブネットEQは男性の話者を正確に模倣した声で「トラブル(trouble)」という単語の第2音節を置き換えている。

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ウィル・ダグラス・ヘブン [Will Douglas Heaven] 2020.04.08, 6:52
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

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1689日前
Google taught this robotic dog to learn new tricks by imitating a real oneグーグル、本物の犬の動きをロボット犬に教え込む

グーグルの研究チームは、模倣学習を使って、ロボットがより機敏に歩き、方向を変え、移動する方法を教えている。

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グーグルの研究チームは、模倣学習を使って、ロボットがより機敏に歩き、方向を変え、移動する方法を教えている。

研究チームはこのほど、1匹の犬に装着したさまざまなセンサーから得られたモーション・キャプチャーのデータを使い、「ライカゴ(Laikago)」と名付けられた4本足ロボットに対して、従来の手動のコーディングによるロボット制御では困難な動きを体得させた。

まず始めに、研究チームはそれぞれの動きのシミュレーションを構成するため、本物の犬から得たモーション・データを利用した。犬の小走り、サイドステップ、そして80年代の古典的なダンスの動きである「ランニングマン(running man)」の犬バージョンの動きなどだ。ただし、ランニングマンのデータは本物の犬ではなく、シミュレーションデータから手動で犬のダンスのアニメーションを作成し、ロボットに適用可能か確認した。次に、研究チームは、シミュレーションされた犬とロボットの主要な関節を組み合わせ、ロボットが実際の動物とまったく同じ動きをするよう調整した。その後、強化学習を用いてロボット犬は各動作を安定させ、体重分布と設計の違いを修正できるようになった。最後に研究チームは、最終的な制御アルゴリズムを物理的なロボット犬に移植することに成功した。なお、ランニングマンなど一部の動きについては、完全には実現できなかった。

実世界を動き回るのに必要な複雑で機敏な動きをロボットに体得させることは、ロボット工学における長年の課題となっている。今回発表されたような模倣学習は、機械が動物や人間の持つ機敏さを容易に取り入れることを可能にするものだ。

研究論文の筆頭筆者であるジェイソン・ペンは、依然として克服すべき課題がいくつか残っているという。たとえばロボットの重さが、大きくジャンプしたりすばやく走るといった特定の動作習得に制限をかけている。加えて、実際の動物から常にモーション・センサーデータが取れるとは限らないという問題もある。場合によっては非常に高いコストがかかったり、動物の協力が必要な場合もある。たとえば、犬は人間に対し友好的だが、チーターはそうでもない。研究チームは動物から協力を得る代わりに、動物の映像を活用する計画を立てている。これが可能なら、研究チームの手法ははるかに利用しやすく、拡張性の高いものとなるだろう。
4月6日9時25分更新:タイトルの誤字を修正しました。

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  • 画像クレジット: Google
カーレン・ハオ [Karen Hao] 2020.04.06, 6:37
1709日前
The UK is scrambling to correct its coronavirus strategy英政府、独自の新型コロナ「集団免疫」戦略を修正へ

英国政府に助言するため専門家グループが新たな報告書をまとめた。英国政府が出した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する「集団免疫」アプローチは、結果として25万人もの命を奪う可能性があり、保健医療機関の崩壊阻止にほとんど役立たないと、厳しく評価している。

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英国政府に助言するため専門家グループが新たな報告書をまとめた。英国政府が出した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する「集団免疫」アプローチは、結果として25万人もの命を奪う可能性があり、保健医療機関の崩壊阻止にほとんど役立たないと、厳しく評価している。

英国のボリス・ジョンソン首相は先週、英国が欧州隣国とは異なる新型コロナウイルス戦略を採用すると発表した。ほとんどの国の政府は、多くの人が集まる機会を抑制し、隔離措置を課す「社会距離戦略」を推進することで、ウイルスの拡散を抑制しようとしている。しかし、ジョンソン首相はこのような措置を見送り、アウトブレイクによる保健医療システムの崩壊を防いで感染拡大ピーク時に最も脆弱な人々を保護するために、他国と一線を画す計画を実施すると発表した。この戦略では、人口の少なくとも60%が新型コロナウイルスに感染し、回復することが見込まれている。感染者の多くは軽度の症状しか現れない比較的若い人たちだ。英国政府は、この戦略は結果的に、脆弱なグループを感染から保護する「集団免疫」をもたらす一方、時間の経過とともに安全対策について非協力的になる人間の「行動的疲労」を回避すると考えた。

ジョンソン首相が発表したこの戦略は週末にかけて激しい批判にさらされた。インペリアル・カレッジ・ロンドンに拠点を置く「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応チーム」が3月16日に明らかにしたところでは、この数日間で政府の専門家チームはようやく、その政策が「おそらく数十万人の死をもたらす可能性が高い」(25万人の死者を出す可能性がある)こと、そして、保健医療システムが保有する患者への対応能力とリソースの最大8倍の需要に見舞われることになると認識するに至ったという。

インペリアル・カレッジで感染症疫学を率いるアズラ・ガーニ教授は3月16日に、「集団免疫を獲得できると期待していましたが、集団免疫アプローチでは事態に対処できないことがわかりました」と記者団に語った。新たな報告書は代替策として、他の多くの国と同様に、一貫して感染者数を低く保つ積極的な政策でウイルスを抑制することを提唱している。

誤りに気付いた英国政府は現在、慌てて政策改善を試みているようだ。ジョンソン首相は3月16日、英国民に「不必要な接触」を避け、人混みや混雑した場所へ行くことを控えるように求めた。3月17日には、多くの人が集まるイベントや集会を禁止し、同居する家族が症状を示した場合、家族全員が2週間の自宅待機を実行して「食料や必需品の購入」のために出かけることさえ控えるよう要請している。

「今の目的は、感染者数の増加率を抑えることではなく、エピデミック(局地的な流行)を逆行させることです」とガーニ教授は説明する。「数万人の死者で収まることを願います。数千人で済むかもしれません」。

残念ながらこの報告では、コロナウイルスのワクチンが生産されて利用可能になるまで、隔離と社会距離の戦略を維持する必要があることも示唆されている。ワクチンの生産には18カ月かかる可能性がある。インペリアル・カレッジの疫学者であるニール・ファーガソン教授は、「この危機から脱する唯一の戦略は、ワクチン接種または他の革新的なテクノロジーです」と語った。

(関連記事:新型コロナウイルス感染症に関する記事一覧

3月17日22時50分更新:タイトルを修正しました。

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  • 画像クレジット: AP
ニール・V・パテル [Neel V. Patel] 2020.03.17, 17:25
1710日前
Google is making it easier to develop quantum machine learning appsグーグル、機械学習ライブラリ「テンソルフロー」の量子版を公開

グーグルは量子機械学習アプリの作成をより容易にする、無料のオープンソース・ソフトウェア「テンソルフロー・クアンタム(TensorFlow Quantum)」をリリースした。2015年の発表以来、機械学習の普及に貢献してきたグーグルの人気ツールキット、テンソルフローのアドオンだ。

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グーグルは量子機械学習アプリの作成をより容易にする、無料のオープンソース・ソフトウェア「テンソルフロー・クアンタム(TensorFlow Quantum)」をリリースした。2015年の発表以来、機械学習の普及に貢献してきたグーグルの人気ツールキット、テンソルフローのアドオンだ。

テンソルフローは、多層ニューラルネットワークを簡素化し、再利用可能なコードを提供することで、新しい機械学習アプリをゼロから作成する必要をなくし、機械学習を利用しやすくするものだ。テンソルフロー・クアンタムは、量子機械学習でも同様のことを実現しようとしている。

テンソルフロー・クアンタムを使うと、アプリを実行しているハードウェアの細かな制約に縛られることなく量子アプリを作成できる。実際の量子コンピューターと従来のコンピューター上でシミュレーションする量子コンピューターとを切り替えられる。つまり、本格的な量子コンピューターでアプリを実行する前に、シミュレーション上で量子アプリをデバッグできるわけだ。テンソルフロー・クアンタムの開発プロジェクトを指揮しているマスード・モフセニー博士は、コード作成者がテンソルフローを使うことで、他の開発者たちが繰り返し利用できる基礎的な新しいアルゴリズムを発見することに期待している。

量子機械学習向けのツールキットはこれまでにも存在していた。たとえば、カナダのトロントに拠点を置く量子コンピューティングのスタートアップ企業であるザナドゥ(Xanadu)は、テンソルフローと似た「ペニーレーン(Pennylane)」というプラットフォームを提供している。だが、グーグルによるツール開発の重要性はかなり大きいと、ザナドゥの研究員ネイサン・キロラン博士はいう。キロラン博士によると、テンソルフローなどの有名ツールの周りには開発者コミュニティが築かれ、コードやアイデアを共有し、イノベーションが促進される。機械学習技術は、開発者コミニュニティのおかげでよい方向に発展してきた。グーグルのチームは、テンソルフロー・クアンタムによって量子コンピューティングの世界でも同じ結果を得ようとしている。

現在のところ、量子機械学習は極めてニッチな分野だ。研究者向けに提供されるテンソルフロー・クアンタムは、その使用目的が自然界のモデリングであれ、暗号量子鍵配送装置などのデバイスであれ、量子データの扱いを容易にしてくれる。自然現象は量子法則に従うことから、機械学習モデルに現実世界を正確に反映させるためには、機械学習モデルもまた量子の性質を踏まえたものでなければならないと、モフセニー博士は考えている。

カナダのブリティッシュ・コロンビア州に拠点を置く量子コンピューティング企業Dウェーブ・システム(D-Wave Systems)も先月、自社製の量子アプリ開発用ツールキット「リープ(Leap)」の新バージョンをリリースした。リープは、バスの運行ルートを計画する超高精度の公共輸送シミュレーターを作成したフォルクスワーゲンや、5Gネットワークの最適化を目的とする量子アプリを作成したテレコム・イタリア(Telecom Italia)など、いくつかの大企業で社内用量子ソフトの開発に採用されている。

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  • 画像クレジット: Fabian Grohs / Unsplash
ウィル・ダグラス・ヘブン [Will Douglas Heaven] 2020.03.16, 6:53
1711日前
Trump is considering a fossil fuel bailout, amid coronavirus worriesトランプ大統領が石油・天然ガス業界への支援を表明、新型コロナ対策で

原油価格の急落と新型コロナウイルスの大流行によって石油・天然ガス業界が打撃を受ける中、トランプ政権がこれらの業界の米国企業に対し、緊急支援策の推進を「積極的に検討」しているとワシントンポスト紙が伝えた。

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原油価格の急落と新型コロナウイルスの大流行によって石油・天然ガス業界が打撃を受ける中、トランプ政権がこれらの業界の米国企業に対し、緊急支援策の推進を「積極的に検討」しているとワシントンポスト紙が伝えた。

ワシントンポスト紙はホワイトハウスの内情に詳しい情報筋の話として、緊急支援策は政府によるシェール掘削会社への低金利貸付という形になりそうだと報じている。大きな債務を抱え、民間資本の利用が難しくなっている石油・天然ガス業界に救いの手が差し伸べられることになる。今回のような歴史的な原油価格暴落が続けば米大手が生存競争にさらされる、とアナリストらは述べている。

石油・天然ガス業界への緊急支援策の提案に対しては、気候やエネルギーの観測筋からすぐさま批判が巻き起こった。連邦政府のエネルギー分野への援助は化石燃料業界を支えるのではなく、気候リスクとの戦いを支援するようなクリーンな技術に向けられるべきだとの主張だ。

2008年に金融危機が起きた際、オバマ政権は再生エネルギー企業への支援策を発表して保守層からの批判にさらされたが、今回の支援策を支持する共和党の姿はちょうどその対極に当たる。

トランプ大統領は3月9日、公衆衛生の危機拡大のあおりを受けている他の業界(航空、クルーズ船、ホテルなど)について支援すると発表したが、今回の石油・ガス業界に関する提案はそれに続くものだ。超党派の気候・クリーンエネルギー法案を通過させる取り組みが、崩壊しそうな様相を呈しているタイミングでもあった。

新型コロナウイルスの拡散防止では積極性を見せていないにもかかわらず、トランプ政権は企業救済にすみやかに乗り出している。中国でのアウトブレイクの後も、連邦政府は来る危機への準備を全体として怠ったと保健の専門家たちは述べている。何よりも、米国の検査体制は他国と比べて大きく遅れている。トランプ大統領自身が一貫してリスクを軽視し、誤ったアドバイスや情報を拡散させているのだ。

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  • 画像クレジット: Courtesy: BP
ジェームス・テンプル [James Temple] 2020.03.15, 5:30
1714日前
These are 6 of the main differences between flu and coronavirus新型コロナとインフルの似ているところ、違うところ=WHO報告

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの違いをまとめた報告書を発表した。

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世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの違いをまとめた報告書を発表した。

新型コロナとインフルの類似点

感染経路は接触感染:どちらもウイルスが付着した人や物に触れた手で自分の顔を触ることで、感染してしまう(新型コロナウイルスは、感染者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染の可能性もある)。

症状に類似点が多い:新型コロナウイルスもインフルエンザも、さまざまな形で呼吸器系に影響を及ぼす。どちらも発熱、倦怠感、咳を引き起こす。深刻な呼吸器疾患は肺炎につながり、死に至ることもある。

新型コロナとインフルの相違点

新型コロナウイルスの感染速度はインフルエンザを下回る:恐らくこの点が最大の違いだ。インフルエンザの方が、潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)と発症間隔(感染源の発症から2次感染者の発症までの時間)が短い。WHOによると、新型コロナウイルスの発症間隔は約5〜6日だが、インフルエンザの発症間隔は3日ほどだ。したがって、インフルエンザの方が感染拡大のスピードが速い。

ウイルス排出:ウイルス排出は、ウイルスが宿主に感染して繁殖し、周囲に放出しているときに発生する。したがって排出によって感染者が他人にウイルスを感染させてしまう。新型コロナウイルスの感染者の一部は、感染から2日以内で症状が出る前にウイルスを排出していた。とはいえWHOは、このような感染者は恐らく感染拡大の主因ではないと考えている(今週発表された査読前の論文では、新型コロナウイルス感染症の患者は無症状か軽度の症状を示す初期段階に、大量のウイルスを排出していることが示されている)。

インフルエンザウイルスは通常、症状が現れてから最初の2日間にウイルス排出が起こり、最大1週間排出が続く。しかし、ランセット(The Lancet)に発表された中国の患者に関する研究によると、新型コロナウイルス感染症の患者は約20日間(または死亡するまで)ウイルスを排出し続けていたことが分かった。検出されたウイルス排出最短期間は8日だが、37日目にウイルスを排出していた症例もあった。このことから、新型コロナウイルス感染症の患者が、インフルエンザ患者よりもはるかに長く感染力を維持すると考えられる。

 2次感染:たちの悪いことに、新型コロナウイルスはさらに2つほどの2次感染を起こす。インフルエンザも一般的な肺炎などの2次細菌感染を引き起こすことがあるが、インフルエンザ患者が2つの2次感染にかかることは珍しい。WHOは状況が重要だと警告した(たとえば、感染者がもともと別の病気を患っていた可能性がある)。

新型コロナウイルスを広めているのは大人:インフルエンザでは子どもが感染の原因であることが多いが、新型コロナウイルスは大人の間で感染が広がっているようだ。したがって、最も深刻な影響を受けているのは、高齢者と基礎疾患がある人を中心とした大人だ。ワシントンポスト紙によると、子どもたちが新型コロナウイルス感染症の重症化を免れている理由について、専門家は困惑している。子どもは、新型コロナウイルス近縁のコロナウイルスを原因とする風邪にかかりやすく、新型コロナウイルスに対する免疫を持っている可能性があると推測する専門家もいる。また、子どもの免疫系は常に警戒態勢にあり、大人よりもすばやく新型コロナウイルスと戦うからとの見方もある。

 新型コロナウイルスはインフルエンザよりもはるかに致命的:死亡件数を症例報告件数で割った新型コロナウイルスの致死率は、これまでのところ約3%〜4%だが、まだ報告されていない症例が多くあるため、実際はこの値を下回る可能性が高い。一方、インフルエンザの致死率は0.1%だ。

新型コロナウイルスには治療法やワクチンは存在しない:新型コロナウイルス感染症の治療法やワクチンの開発は進んでいるが、まだ存在しない。一方、インフルエンザ・ワクチンは存在する。インフルエンザ・ワクチンを接種すれば、今後数週間に医療機関にかかる多大な負担の軽減につながるかもしれない。

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ターニャ・バス [Tanya Basu] 2020.03.12, 18:28
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

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1714日前
The coronavirus is now officially a pandemicWHOが新型コロナの「パンデミック」を正式発表

ジュネーブに本部を置く世界保健機関(WHO)は3月11日、世界各地で感染が広がる新型コロナウイルスについて、パンデミックの状態にあると正式に発表した。

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ジュネーブに本部を置く世界保健機関(WHO)は3月11日、世界各地で感染が広がる新型コロナウイルスについて、パンデミックの状態にあると正式に発表した。

パンデミックとは、新型コロナウイルスが同時に多くの国で流行していることを意味する。この発表はまた、世界各国でコロナウイルスの封じ込めが難航しているという認識を示すものでもある。

WHOは、各国が医療体制を整え、社会全体でコロナウイルスに包括的に対抗していくことを呼びかけた。

「コロナウイルスで『パンデミック』と呼ばれる事態になったのは今回が初めてです。しかし、封じ込めが可能であることを示す初めてのケースにもなり得ます」。WHOのテドロス・アダノム事務局長は話した。「対策を強化し、より積極的に立ち向かっていく必要があります」。

新型コロナウイルスのアウトブレイクは昨年末に中国で起こり、中国での感染者数は8万人以上に上る。ウイルスは旅行客を介してすぐに他の国に広がり、各地でアウトブレイクを引き起こした。

ジョンズ・ホプキンス大学のダッシュボードによると現在、米国を含む8カ国でそれぞれ1000件以上、重篤な肺炎を引き起こすことで知られる「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」の症例が報告されている。さらに10カ国以上で数百件が確認されている。

WHOは引き続き各国が新型コロナウイルスの封じ込めに取り組むようを求めている。だが、自国の医療制度に支障をきたさないように、封じ込めからウイルスの影響を緩和する対策や、ウイルスの広がりを遅らせようとしたりする動きに移行している国があることを認識している。

「パンデミックの状況にあると述べましたが、ウイルスの封じ込めから影響を緩和する対策に切り替えるべきだと言っているわけでは決してありません」とテドロス事務局長は述べた。「ウイルスの封じ込めを基軸とした、さまざまなな取り組みを奨励しています」。

WHOは、81カ国では依然として症例の報告がないと述べた。テドロス事務局長は、これらの国々は「決してウイルスに屈してはなりません」と語った。10件以下の症例しか確認されていない他の57カ国では、ウイルスの蔓延を早期に阻止できる可能性がある。

WHOは特定の国を批判することはなかったが、米国のような検査水準の低い国は効果的な対応をしていないと指摘した。

中国と韓国では、新たな感染者の発生が以前に比べて遥かに少なくなり、新型コロナウイルスの抑え込みがどうにかうまくいっている。しかし、対策がなされない他の国でウイルスが広がると、抑制に成功している国でも簡単に再流行してしまう可能性がある。

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  • 画像クレジット: AP Images
MIT Technology Review編集部 [MIT Technology Review Editors] 2020.03.12, 18:04
1714日前
A Bill Gates program will send Seattle residents at-home coronavirus testsゲイツ財団、シアトル住民にコロナウイルス検査キット配布へ

新型コロナウイルスへの感染不安を抱くシアトル住民は、間もなくその答えを得られるだろう。ゲイツ財団の資金提供によって、自宅で鼻の粘膜を採取する検査キットが配布される予定だ。シアトル・タイムズ紙が報じた。

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新型コロナウイルスへの感染不安を抱くシアトル住民は、間もなくその答えを得られるだろう。ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の資金提供によって、自宅で鼻の粘膜を採取する検査キットが配布される予定だ。シアトル・タイムズ紙が報じた

この検査では、自宅で採取したサンプルを郵送して分析してもらう。結果は48時間で判明し、保健当局へ報告される。オンライン・ポータル上で、どこで人と接触したかも報告できる。自宅検査方式は、同じくビル・ゲイツの資金提供で2年前から始まった「シアトル・フルー(インフルエンザ)・スタディ」ですでに試験運用されており、シアトル・タイムズによると、当局は同様の検査キットを使ってインフルエンザの拡大を追跡しているという。

今のところ、ウイルス感染者または感染疑いのある人の多くが、検査を受けられていない現状がある。政府の検査キットが不足し、誰を検査対象とするかについて厳しい条件がつけられているためだ。

コロナウイルス検査キットの配布プログラムがいつ始まるかについてはまだはっきり決まっていないが、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団のコロナウイルス対策責任者のスコット・ドウェルによると、現在ソフトウェアと質問リストの最終調整に入っているという。

ドウェルはシアトル・タイムズに対して、「まだやるべきことはたくさんありますが、これが流行の流れを変える大きな機会となりそうです」と語った。ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団は、シアトル地域の保健当局へ500万ドルの資金を支援すると発表した。

シアトルでは、これまでのところ米国でもっとも多い70人以上の感染者を出しているが、実際の感染者はそれよりも多いとされ、いずれ数千人に及ぶ恐れがある。ワシントン大学は先週、オンライン講義への移行を発表しており、シアトルで開催されるコミック・コン(Comic Con)など大規模なイベントも中止や延期が相次いでいる。

ゲイツは何年も前から、「疾病X」によるパンデミックの到来を警告してきた。コロナウイルスによってその警告が現実のものとなりつつあるいま、ワクチンと公衆衛生インフラに資金を出す財団の取り組みが試されようとしている。

 

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アントニオ・レガラード [Antonio Regalado] 2020.03.12, 8:27
1714日前
Harvard tells students not to return from spring breakハーバード大学とMITもオンライン講義に、新型コロナ対策で

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がボストンの生物医学コミュニティに広がる中、ハーバード大学はオンライン講義への移行を発表し、学生に対して春休み明けに大学に戻らないよう呼びかけている。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がボストンの生物医学コミュニティに広がる中、ハーバード大学はオンライン講義への移行を発表し、学生に対して春休み明けに大学へ戻らないよう呼びかけている。

ハーバード大学は3月23日までに講義をオンラインへ切り替える計画だ。同大学では3月14日から22日までが春休みだが、休み明け後も大学には戻らないよう学生に求めている(本記事の公開後、MIT=マサチューセッツ工科大学も同様の処置を発表した。MITの春休みは21日に始まるが、16日から20日までの講義は休講となる)。

ハーバード大学の学部生は6500人以上で、合計2万人以上の学生が在籍する。

「この数週間、いかに私たちが1人1人の人と繋がっているか、そして、いかに今日の選択によって明日の選択肢が決まるか、ということを改めて強く考えさせられました」と、ローレンス・バコウ学長は大学のWebサイトに掲載した声明で述べた。

ハーバード大学の措置は防疫当局の勧告とも「一致している」という。防疫当局はパンデミック(世界的大流行)のペースを遅らせるため、高齢者に対して旅行や他人との接触を避けるよう要請しており、その他の国民にも社会的距離を置くよう勧めている。

「この措置は、単に自分自身を守るためだけでなく、自分よりもこの病気に罹りやすい可能性がある他の人々やコミュニティを守るためでもあります」とバコウ学長は述べた。

通常の活動を制限する必要性はない、とのドナルド・トランプ大統領の声明とは対照的に、ハーバード大学の動きは米国の他の大学の閉鎖を促す可能性がある。

「昨年は、3万7000人の米国人が一般的なインフルエンザで死亡しました。平均すると、毎年2万7000人から7万人です。(それでも)何も閉鎖しないし、生活・経済は続いています。現在、確認されたコロナウイルスの症例は546件で、死亡者数は22人。考えてみてほしい!」。トランプ大統領は3月9日にこうツイートした。

ハーバード大学は、大規模な集会と濃厚接触を避けるのが狙いだと説明している。キャンパスは閉鎖せず、大学本部は業務を続ける予定だ。

科学への影響はどうだろうか? コロナウイルスのアウトブレイクに見舞われたマサチューセッツ州では、現在までに40人以上の感染者が確認されている。そのうちの多くは、バイオテクノロジー企業バイオジェン(Biogen)が先月開催したカンファレンスの関係者だった。

ハーバード大学の今回の措置が、新型コロナウイルス研究に関わる研究室を含む、同大の生物医学研究にどう影響を与えるかは現時点では明らかではない。

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  • 画像クレジット: Wikimedia
アントニオ・レガラード [Antonio Regalado] 2020.03.12, 6:58
1716日前
China’s travel lockdown sharply slowed the global spread of Covid-19武漢市のロックダウン、新型コロナの感染拡大を減速

中国・武漢市の隔離措置は病気の蔓延を遅らせた可能性があるが、長期的な影響を軽減することはない。サイエンス誌に掲載された新研究で明らかになった。

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中国・武漢市の隔離措置は病気の蔓延を遅らせた可能性があるが、長期的な影響を軽減することはない。サイエンス誌に掲載された新研究で明らかになった。

研究チームは感染症の伝播モデルを用いて、移動制限が新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に与える影響をシミュレーションした。主な発見は以下の通りだ。

1. 武漢の隔離はおそらく、中国本土における影響をそれほど軽減しなかった
1月23日に実施された移動禁止措置は、人の移動が通常どおり続いた場合に比べて、中国国内での新型コロナウイルスの感染拡大を推定3~5日遅らせた。だが、シミュレーションによると、移動禁止措置が実施された時にはすでにほとんどの中国の都市に感染患者がいたため、おそらく同措置は感染者総数の抑制にあまり貢献しなかっただろう。

2.  世界的に見れば様相は大きく異なる
中国本土から世界各都市にもたらされる感染数は、2月中旬までに77%軽減されたと推定されている。ウイルス感染者はいるが、いまだ武漢ほど感染が蔓延していない上海、北京、深センを含む中国の他の都市からの感染者が、中国国外に感染を広め続けた。結果的に、世界各地の感染者数は移動禁止措置から2~3週間のうちに急増する危険性が依然として残っている。

3.  世界各国の中国への継続的な渡航制限は、おそらくあまり効果をもたらさない
シミュレーションによると、中国本土への渡航者と中国本土からの渡航者の総数を40%減らした場合も90%減らした場合も、世界各地への新型コロナウイルスの感染拡大の予測に大きな変化は認められないという。シミュレーションは感染拡大の減速を示すものの、全体的な影響の低減は認められなかった。

4. 移動制限と人から人への感染の抑制の組み合わせは、感染拡大を著しく減速させる可能性がある
感染率を25%または50%低減させることが、蔓延を抑制するのにもっとも大きな効果があるようだ。このような感染率の低減は、早期発見、感染者の隔離および行動の変化を通じて達成できる。移動制限と組み合わせた措置が、世界での感染拡大を最小限に抑えるのに役立つ可能性がある。

研究チームは今回、世界伝染病・移動度モデル(Global Epidemic and Mobility Model)を用いてアウトブレイク拡大のシミュレーションを実施した。同モデルは、報告された感染者数のデータを考慮した上で、それが感染者総数のごく一部を表すものと想定する。また、空港などの主要な交通ハブの場所および飛行パターンに関するデータも計算に入れ、各ハブ間に一定レベルの人の移動があることを想定している。シミュレーションを実施した研究チームは、既存の科学論文に基づいて、潜伏期間や世代時間を含む新型コロナウイルスの特性も推定した。

新型コロナウイルス感染症にはまだ多くの不確実性がある。同モデルによる予測は異なる条件下で比較的一貫性のあるものになっているが、より多くの情報がより正確なシミュレーションにつながるだろう。

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  • 画像クレジット: Tomohiro Ohsumi / Stringer / Getty Images AsiaPac
カーレン・ハオ [Karen Hao] 2020.03.10, 6:18
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