フラッシュ2024年6月12日
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生物工学/医療
遺伝子療法などで使うAAVベクターの分析新手法、東大などが開発
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学、名古屋大学、大阪大学などの共同研究チームは、固体ナノポア法を用いてアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター粒子の形状を詳細に解析する技術を開発。これまでのAAVベクター計測法と比べ、圧倒的に少量のサンプルを、非破壊で高性能に解析できるようにした。
「固体ナノポア法」は、半導体技術で作製した微小な穴(ナノポア)を、粒子が通過するときに発生するイオン電流を計測することで、通過する粒子を非破壊で検出・識別する方法である。研究チームは今回、ナノ細孔の材料・構造設計と計測条件を最適化し、透過電子顕微鏡に匹敵するレベルの感度で、水中にある微小物体の測長を可能にするナノポアセンサーの開発に成功。さらに、同センサーを用いて、AAVベクターは封入されるDNAの長さによりその粒子径を僅かに変えることを見出した。
遺伝子療法では、ウイルスまたは非ウイルス性ベクターを用いて、患者の遺伝子機能を増強または修正するために必要な導入遺伝子を導入する。AAVベクターは高い感染性、長期の遺伝子発現、比較的低い免疫原性などの特徴を持つため、遺伝子療法などで注目されており、少量のAAVベクターを簡便かつ高精度で品質管理できる技術が求められている。
今回の手法を用いることで、少量のサンプルから簡易に解析ができるようになり、品質管理にかかる費用が抑制され、遺伝子治療用製品の価格を抑える効果が期待される。さらに、技術が進歩すれば、これまではわからなかったAAVベクターの詳細な特徴を解析できるようになり、高品質な遺伝子治療用製品の開発にもつながる可能性があるという。
研究論文は2024年6月5日に、米国科学誌ACSナノ(ACS Nano)のオンライン版で公開された。
(中條)
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