フラッシュ2024年5月31日
-
生物工学/医療
東北大、針なし注射の新技術を開発 注入量倍増と小型化を実現
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東北大学の研究チームは、針を使わない注射の薬剤注入量を倍増させ、機器の小型化を実現する技術を開発した。この技術は、微小な電流を流して薬やワクチンを浸透させる「イオンフォトレーシス」の一種である。
従来のイオンフォトレーシスでは、薬液は陽極側から注入され、陰極側では体液が吸い出されるため、装置の小型化には限界があった。研究チームは、この問題を解決するために、新たな多孔性マイクロニードルを開発した。細孔の内壁に負電荷を帯びたPAMPS(ポリ-2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)を析出させたマイクロニードルと、正電荷を帯びたPAPTAC(ポリ-(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム)を析出させたマイクロニードルの2種類を用いた。この2種類のマイクロニードルをそれぞれ陽極と陰極に搭載することで、両極から薬液を注入できる小型の注射器を作成した。
ブタ皮膚切片にデキストランやローダミンを注入した実験の結果、分子のサイズや電荷に関係なく、両極から安定して薬液を注入できることが確認された。また、この注射器を使ってマウスにワクチンを投与した結果、抗体産生が倍増することが明らかになった。
研究成果は5月21日、アドバンスト・ヘルスケア・マテリアルズ(Advanced Healthcare Materials)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
-
- 人気の記事ランキング
-
- From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
- Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
- AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
- What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
- A new Microsoft chip could lead to more stable quantum computers マイクロソフト、初の「トポロジカル量子チップ」 安定性に強み