フラッシュ2024年3月22日
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生物工学/医療
肝臓の脂質過酸化細胞死を制御する因子を特定=自治医大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]自治医科大学、東北大学、九州大学、ドイツ研究センターヘルムホルツ協会の研究グループは、肝臓のフェロトーシス(脂質過酸化細胞死)を制御する因子を発見した。フェロトーシスは細胞膜のリン脂質の過酸化によって引き起こされる細胞死。神経変性疾患や虚血再灌流による臓器障害、非アルコール性脂肪肝炎など、さまざまな疾病に関係することが明らかになっている。
研究グループはヒト肝がん細胞株をゲノムワイドCRISPRスクリーニングの手法で解析し、遺伝子欠損の影響を網羅的に探索した。GPX4阻害剤であるRSL3を使ってフェロトーシスを誘導した結果、生存した細胞の大部分がDHCR7遺伝子を欠損していることが明らかになった。実際にDHCR7欠損細胞を作成してみると、この細胞はさまざまなフェロトーシス誘導刺激に抵抗し、フェロトーシスの指標である過酸化リン脂質の生成が抑制されることが分かった。
研究グループは、DHCR7が7-DHCをコレステロールに変換する酵素であることから、DHCR7欠損細胞では7-DHCが蓄積してフェロトーシスに対して抵抗できるのではないかと想定。検証を進めたところ、蓄積した7-DHCはリン脂質の代わりに酸化され、リン脂質の過酸化を保護することが明らかになった。また、DHCR7を阻害することで得られるフェロトーシス保護作用は、コレステロール合成が活発な細胞で発生し、幹細胞特有の作用であることが判明。マウスにDHCR7阻害剤を投与したところ、DHCR7阻害剤が肝臓の虚血再灌流障害を抑制することが明らかになった。
研究成果は3月12日、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌にオンライン掲載された。今回の研究はDHCR7阻害が虚血再灌流障害などの急性肝障害に有効である可能性を示す結果となったが、非アルコール性脂肪肝炎など、慢性疾患への有効性も期待できるとしている。
(笹田)
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