フラッシュ2024年1月30日
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生物工学/医療
心理社会ストレス反応の個人差なぜ起きる? 脳内メカニズム解明
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]京都大学、大阪大学、名古屋市立大学の研究グループは、心理社会ストレスに対する個々の反応の違いを生み出す脳内メカニズムを特定した。心理社会ストレスが引き起こす症状は人によって異なり、これまでその個体差を決定づけるメカニズムは解明されていなかった。
研究では、ヒトと同じようにストレスに対して多様な反応を示すマウスを用いて実験が行われた。特に、精神疾患で見られる社会性の低下とアンヘドニア(快楽を感じない状態)という2つの症状に焦点を当て、心理社会的ストレスを受けたマウスをこれらの症状の有無によって4つのグループに分類した。
その後、4つのグループのマウスの脳内神経活動をFos発現マッピングで調査した結果、社会性の低下とアンヘドニアの両方を示すマウスでは内側前頭前野から視床室傍核への神経活動が顕著に低下していることが分かった。また、社会性の低下のみを示すマウスでは内側前頭前野から扁桃体への神経活動が、アンヘドニアのみを示すマウスでは内側前頭前野から側坐核への神経活動がそれぞれ低下していた。
さらに、社会性の低下とアンヘドニアの両方の症状を示すマウスに注目し、目的の神経経路を活性化させる技術を用いて実験したところ、症状が消失した。この神経活動の低下を引き起こす分子メカニズムの解析からは、視床室傍核に投射する内側前頭前野の神経細胞内で遺伝子発現制御に関わるタンパク質KDM5Cの活性化が行動異常を引き起こすことが示された。KDM5Cをマウスに投与すると、社会性の低下とアンヘドニアの両方の症状を示すマウスが顕著に減少し、症状を示さないマウスが増加した。
心理社会ストレスによる症状の個体差を説明する重要な発見であり、将来的に精神疾患の治療への応用が期待される。研究成果は1月16日、ニューロン(Neuron)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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