フラッシュ2023年11月13日
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生物工学/医療
肺腺がんへの「かかりやすさ」に関わる遺伝子の差を解明
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]国立がん研究センターなどの研究グループは、日本人の肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子多型を解明した。肺腺がんは肺がんの中でも最も発症頻度が高く、増加傾向にある。また、肺がんの危険因子である喫煙との関連が比較的弱く、患者のおよそ半数が非喫煙者であり、喫煙のほかに危険因子を特定できていないことから、罹患危険群の把握や発症予防が困難となっている。
研究グループは、日本人の肺腺がんへ患者約1万7000例と、肺がんに罹患していない人約15万例を対象に遺伝子多型を比較し、肺腺がん患者が優先的に持つ遺伝子の個人差を同定した。その結果、染色体DNAの末端に存在しゲノムの安定化に関係するテロメア配列の長さを調節するTERT、TERC、POT1遺伝子や、体内から異物を排除する免疫に関係するHLAクラスI/II遺伝子など、19種類の遺伝子の個人差が日本人の肺腺がんへのかかりやすさに関係することが明らかになった。
さらに、上記19種類の遺伝子の個人差について、EGFR遺伝子に変異を持つ肺腺がんと、持たない肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差の強さを比較した。その結果、HLAクラスII遺伝子の4つの個人差と、TERT遺伝子の個人差が、EGFR遺伝子に変異を持つ肺腺がんにより強く関わることが明らかになった。
テロメア配列の長さを調節するTERT、TERC、POT1遺伝子の個人差と、その人が持つテロメアの長さの関係からは、肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差を持つ人は、持たない人に比べてテロメアが長い傾向があることが分かった。この結果は、TERT、TERC、POT1遺伝子の個人差を持つ人が、より長いテロメア配列を持つことで、肺の細胞ががん化する可能性を示している。
研究成果は10月26日、キャンサー・コミュニケーションズ(Cancer Communications)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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