フラッシュ2023年10月19日
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気候変動/エネルギー
エルニーニョが熱帯雨林のCO2吸収に及ぼす影響を解明=東大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学、琉球大学、九州大学、大阪公立大学の共同研究チームは、ボルネオ熱帯雨林において、いくつかのエルニーニョとラニーニャを含む10年間のフィールド観測と観測データに基づくコンピューター・シミュレーションを実行。森林単位の二酸化炭素(CO2)吸収速度がラニーニャ時で大きくなりエルニーニョ時で小さくなることを発見。その原因は、光合成能力がラニーニャ時で大きくなり、エルニーニョ時で小さくなることにあることを突き止めた。
研究チームは、マレーシアのサラワク州ランビルヒルズ国立公園の天然熱帯雨林において、10年間(2010-2019年)に及ぶ渦相関フラックス観測(樹冠-大気間でやり取りされる熱・H2O・CO2の流れの計測)を実施。観測データとしての太陽放射、気温などの気象因子や、生態系の生産力を示す純CO2吸収速度、光合成などに関係する植物生理学を反映するシミュレーションにより、この熱帯雨林のCO2吸収速度はラニーニャ時で大きくなり、エルニーニョ時で小さくなることを見い出した。
さらに、機械学習を用いた解析により、様々な気象因子と生理学的因子を含む合計9つの制御因子の内、どれがCO2およびH2Oのフラックス(流束)を決めているのかを調査。その結果、エルニーニョでは、強い太陽放射が光合成速度を高める方向に働く一方で、それを打ち消すほど「ルビスコ(光合成反応を触媒する酵素)」の最大能力が低下し、CO2吸収速度が低下していることを突き止めた。
今回の知見は、東南アジアの熱帯雨林が長期的にどのように炭素を蓄積してきたのかを理解し、未来の東南アジア熱帯雨林だけでなく地球規模の炭素収支の予測に役立つことが期待される。研究論文は、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に2023年10月9日付で掲載された。
(中條)
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