フラッシュ2023年8月17日
-
気候変動/エネルギー
67年前に予言された「パインズの悪魔」を初めて観測=京大など
by MITテクノロジーレビュー イベント事務局 [MIT Technology Review Event Producer]米国イリノイ大学や京都大学などの国際研究チームは、67年前に予言された金属の奇妙な振る舞いを発見した。発見された振る舞いは、米国の理論物理学者デイヴィッド・パインズが1956年に予言して「デーモン(DEM-on、悪魔)」と名付けた固体中の電子の奇妙な状態に該当し、これまで理論的に推察されてきたが、実験の報告例はなかった。
研究チームは今回、京都大学で育成されたストロンチウム・ルテニウム酸化物(Sr2RuO4)の結晶を用いて、「運動量分解電子エネルギー損失分光(M-EELS)」と呼ばれる手法で新たな励起モードを観測。同モードのギャップレスの振る舞いや、強度の運動量依存性、臨界運動量などから、観測された状態が「パインズの悪魔」であると確認できたという。
パインズの悪魔は、固体中では電子が結合して形成される、質量がなく、電気的に中性で、光と相互作用しない複合粒子を指す。混合原子価半金属の相転移などの現象や、金属ナノ粒子の光学特性、金属水素化物における高温超伝導などで重要な役割を果たしているのではないかと考えられており、他のマルチバンド金属でも広く存在するものと期待されるという。研究論文は、ネイチャー(Nature)に2023年8月9日付けでオンライン掲載された。
(中條)
-
- 人気の記事ランキング
-
- How a top Chinese AI model overcame US sanctions 米制裁で磨かれた中国AI「DeepSeek-R1」、逆説の革新
- OpenAI has created an AI model for longevity science オープンAI、「GPT-4b micro」で科学分野に参入へ
- 10 Breakthrough Technologies 2025 MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版
- AI means the end of internet search as we’ve known it 「ググる」時代の終わり、 世界の知識を解き放つ 生成AI検索がもたらすもの