フラッシュ2023年8月7日
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気候変動/エネルギー
ロックダウンによる人為的なエアロゾルの減少、温暖化に影響
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]海洋研究開発機構(JAMSTEC)、米航空宇宙局(NASA)、名古屋大学、オランダ王立気象研究所の研究グループは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間の世界的なロックダウンによって、大気中の人為的なエアロゾル粒子量がどう変化し、地球全体の気温にどのような影響を与えたかを明らかにした。エアロゾルは日傘効果などにより地球温暖化を抑制する「ブレーキ」のような効果を持つ。同様の研究は過去にも実施されているが、黄砂のような自然現象によって発生するエアロゾルと、発電・産業・輸送などの人間の社会経済活動によって発生するエアロゾルを区別せずに分析していたため、正確な評価ができていなかった。
今回の研究ではまず、欧州宇宙機関が収集した衛星観測データを、JAMSTECとNASAが開発したデータ同化システムで分析し、人間が発生させるエアロゾルの原料となる窒素酸化物(NOx)と二酸化硫黄(SO2)排出量を精密に推定。2019年(パンデミック前)と2020年の排出量推定値を比較し、ロックダウンの影響を評価した。その結果、2020年4月に東アジア、北米、欧州でNOxの排出量が19〜25%、SO2の排出量が14〜20%減少したと推定できた。NOxとSO2の排出量減少の時間変化は、輸送部門と製鉄部門の活動度の指標や、粗鋼の生産量と相関があり、推定値が確かなものであると確認できた。
さらに研究チームはJAMSTECが保有するスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を使用して、化学気候モデル「MIROC-CHASER」を基に、ロックダウン中のNOxとSO2排出量減少が地球全体のエアロゾル量にどのように影響したのかを算出した。その結果、特に中国東部、米国東部、欧州で、短期的にエアロゾルの量が8〜21%減少していることが明らかになった。この値は、NASAが衛星で観測した2015〜2019年の5年間と、2020年を比較したエアロゾル粒子全体による太陽光の減少量の34%に相当し、NOxとSO2の排出量減少がロックダウン中のエアロゾル量の変化に大きく影響したことを示す。
以上の結果を基に、ロックダウン中のエアロゾル量の減少が、地球全体の温度変化に与える影響を分析した。その結果、エアロゾルによる日傘効果が弱まり、地球に入る熱エネルギーが1平方メートル当たり0.14ワット増加しているとの結果が得られた。エアロゾル減少による昇温効果が、CO2排出量削減による冷却効果や対流圏オゾンによる冷却効果を上回ることを示す結果だ。
研究成果は7月28日、サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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