フラッシュ2023年7月25日
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京大、白金単原子触媒を担体内外に自在に配置する手法
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]京都大学の研究チームは、白金単原子触媒を担体の内外に自在に配置する手法を開発した。貴金属触媒粒子を極限まで小さくした単原子触媒は次世代の触媒として期待されているが、土台となる担体との位置関係を制御する手法や、単原子触媒と担体の位置関係の変化が触媒性能に及ぼす影響は明らかになっていなかった。
研究チームは、白金イオンをCdSeナノ結晶に担持した単原子触媒を作成する際に、白金錯体と溶媒を使い分けることで、白金イオンがCdSeナノ粒子表面に現れた状態と、結晶内部に取り込まれた状態を作り分けることに成功した。具体的には、白金錯体cis-[PtCl2(dmso)2] (dmso:ジメチルスルホキシド)とCdSeナノ結晶を非プロトン性溶媒で反応させると、白金イオンがナノ結晶の表面にとどまり、白金錯体[PtCl4]2−とCdSeナノ結晶をプロトン性溶媒で反応させ、反応後にアミン配位子で処理すると、白金イオンがナノ結晶の内部に担持された構造になることが分かった。2つの構造の違いは、誘導プラズマ発光分析法、X線光電子分光、赤外吸収分光、紫外可視吸収分光、広域X線吸収微細構造といった手法による分析で確認できた。
研究チームは、以上2種類の構造の違いは、反応様式の違いによるものだとしている。表面への担持は、CdSe表面のSe原子が白金錯体の配位子を置換する配位子交換反応であり、内部担持は白金イオンがCdSeのCdイオンを交換するカチオン交換反応だと説明している。
担体表面に白金イオンを担持させたナノ結晶と、担体内部白金イオンを担持させたナノ結晶それぞれの水中での光触媒水素発生反応性能を比較したところ、白金イオンをナノ結晶表面に担持させた触媒は良好な触媒活性を示すが、ナノ結晶内部に担持させた触媒は不安定で活性がすぐに低下した。白金イオンがCdSeナノ結晶表面に存在する触媒を加工して、CdSeナノ結晶内部にも白金イオンを導入すると、触媒活性が低下することも分かったという。
研究成果は7月15日、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌にオンライン掲載された。研究チームは、単原子触媒の設計・合成で、担体との位置関係が触媒性能に影響する重要な要素であることを示したとしている。
(笹田)
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