フラッシュ2023年6月21日
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東大など、二次元結晶を重ねた界面でスピン偏極した光電流を発見
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学らの国際共同研究チームは、2種類の異なる二次元結晶を重ねて作製した界面に円偏光を照射することで、界面の特定の方向にスピン偏極(電子の磁石としての性質であるスピンが特定の方向に偏った状態)した光電流が流れることを発見。観測された光電流が、電子の幾何学的性質によって説明できることを明らかにした。
三次元層状物質から剥離した数原子層からなる二次元結晶は、貼り合わせる物質の種類とはほぼ無関係に作製できるという特徴がある。そのようにして作製された二次元結晶界面では、元の結晶にはない特徴的構造とそれを反映した新しい物性や機能性が発現することがあり、近年注目を集めている。
研究チームは今回、二次元結晶界面の対称性に着目。異なる結晶構造を持った二次元結晶である、二セレン化タングステン(WSe2)とリン化ケイ素(SiP)を重ねることで、対称性が低下した二次元結晶界面を作製した。この界面に流れる光電流を照射光の偏光を変化させながら調べたところ、鏡像面に垂直な方向に円偏光に依存する光電流の成分を観測。円偏光によって励起されたスピン偏極キャリア(電子やホール)の整流効果を実現できることを明らかにした。
同チームは、磁性体電極を用いたデバイスによる測定で、実際に光電流がスピン偏極していることを確認。さらに、円偏光に依存する光電流成分の照射光波長依存性などを詳細に調べることで、観測された光電流が、電子の幾何学的性質を反映した量子力学的機構によって説明できることを見い出した。
今回の研究成果は、二次元結晶界面における新しい光スピントロニクス機能を与えるものであり、二次元結晶界面の機能性開拓をさらに推進する契機となると期待される。研究論文は、ネイチャー・ナノテクノロジー(Nature Nanotechnology)オンライン版に2023年6月15日付けで掲載された。
(中條)
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