フラッシュ2023年6月18日
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金沢大、くも膜下出血後の予後悪化の仕組みを解明
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]金沢大学の研究チームは、くも膜下出血発症後に予後が悪化する仕組みを解明した。くも膜下出血は、発症した患者の3分の1が命を落とし、3分の1は後遺症が残るとされる。先行研究で、くも膜下出血の発症直後には交感神経系の過活動が全身に発生すること、発症直後の脳血流低下が予後悪化につながることが明らかになっていることから、研究チームはくも膜下出血発症直後の脳血流低下に交感神経系が関係するとの仮説を立て、検証した。
研究チームは金沢大学付属病院でくも膜下出血の治療を受けた患者の脳血管撮影データを解析し、脳血流の低下と交感神経系の関係、くも膜下出血の予後に与える影響を調べた。その結果、退院時に重度の神経障害が残った患者は、より軽度な障害で済んだ患者に比べて、発症直後の急性期の脳血流障害が顕著に表れていた。加えて、全身に及ぶ交感神経系の影響を調べるために、心臓への影響を心電図で評価したところ、交感神経の過活動による心電図変化があった患者に脳血流の重度な障害を確認できた。
くも膜下出血を起こしたモデルマウスの脳血流の分析からは、発症直後は脳への血流が十分に行き届いていないことが分かった。脳血管の収縮機能に関連する上頚神経節をあらかじめ取り除いたマウスでくも膜下出血を発生させると、脳血流が顕著に改善していたという。その後の神経障害も抑制できたとしている。以上の結果から、くも膜下出血発症直後の交感神経系の過活動が、脳血流を低下させ、患者の予後を悪化させていることが明らかになった。
研究成果は5月8日、ストローク(Stroke)誌にオンライン掲載された。今回の研究成果を基に、くも膜下出血患者の予後を改善する新たな治療法の開発が期待できるとしている。
(笹田)
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