フラッシュ2023年5月12日
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日中韓の炎症性腸疾患に特徴的な感受性遺伝子を発見=国際共同研究
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東北大学、国立国際医療研究センター、京都大学、九州大学、中国上海市第十人民医院、MIT・ハーバード大学ブロード研究所、韓国蔚山大学、中国広州医科大学、中国神州医療科技、国際IBDジェネティクス・コンソーシアム、中国IBDジェネティクス・コンソーシアム、中国科学技術大学、米シダーズ=シナイ・メディカル・センター、シンガポール国立大学、米ハーバード大学、米マウントサイナイ医科大学の研究グループは、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の中でも、東アジア人に特徴的な疾患感受性遺伝子を80カ所発見した。潰瘍性大腸炎やクローン病は原因不明の疾患で、日本では国が指定する難病となっている。
これまで、炎症性腸疾患の遺伝的要因を解析する研究は、欧米人を対象としたものが多く、すでに200カ所以上の疾患感受性遺伝子が見つかっている。しかし、人種が異なると遺伝的背景が異なることから、欧米での研究結果がアジア人に当てはまらないこともしばしばあった。また、欧米に比べてアジアでは炎症性腸疾患の患者数が少ないため、欧米での研究に比べると小規模な遺伝子解析しかできていなかった。
今回、研究グループは遺伝的によく似た背景を持つ日本人、中国人、韓国人、合計1万4000人以上の炎症性腸疾患の患者の遺伝子を解析した。その結果、東アジア人の炎症性腸疾患に特徴的な疾患感受性遺伝子を80カ所発見。欧米人患者のデータも合わせた人種横断的な解析を試みたところ、さらに81カ所の疾患感受性遺伝子を新たに発見した。
研究成果は5月8日、ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)誌にオンライン掲載された。これまで、炎症性腸疾患の治療薬や治療法は欧米人のデータを基に開発が進んでいたが、東アジア人の遺伝的要因も新たに加えることで、新しい治療薬の開発や、個人に合った治療ができるようになる可能性があるとしている。
(笹田)
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