フラッシュ2023年5月3日
-
観測史上最大の超高速恒星プロミネンス噴出を観測=京大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]京都大学や国立天文台の共同研究チームは、りょうけん座RS型変光星「V1355 Orionis」のモニター観測により、巨大爆発現象「スーパーフレア」とそれに伴う超高速プロミネンス(温度約1万度のプラズマの塊)の噴出を検出することに成功。恒星の活動が周囲の惑星環境へと影響を与える「宇宙天気現象」の最極端なケースを捉えた。
研究チームは2020年12月下旬に、京都大学の3.8メートル「せいめい」望遠鏡を用いて、V1355 Orionisの分光観測を1週間ほど実施した。同時に、NASA(米航空宇宙局)の外惑星探索衛星「テス(TESS)」による測光観測も実施。分光観測データを解析してフレア中のHα水素線のドップラーシフトからフレアの速度を、測光観測データからフレアのエネルギーや持続時間を調べた。
その結果、今回発見したプロミネンスは約1600キロメートル毎秒(km/s)という極めて大きい速度で噴出しており、V1355 Orionisの重力を振り払うのに必要な最低速度である350km/sを大きく超過していたことがわかった。さらに、今回のプロミネンスが太陽での最大級のプロミネンス噴出の100倍以上の質量を持っており、観測史上最大の重さのプロミネンスであることもわかった。
太陽以外の恒星でもフレアに伴ってプロミネンス噴出が確認された例はこれまでにもあったが、その速度が星の重力を振り払えるほど大きかった例はほぼ皆無であったという。研究成果は、国際学術誌アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)に2023年4月27日付けでオンライン掲載された。
(中條)
-
- 人気の記事ランキング
-
- Namibia wants to build the world’s first hydrogen economy 砂漠の国・ナミビア、 世界初「水素立国」への夢
- Promotion MITTR Emerging Technology Nite #33 バイブコーディングって何だ? 7/30イベント開催のお知らせ
- Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2025 「Innovators Under 35 Japan」2025年度候補者募集のお知らせ
- What comes next for AI copyright lawsuits? AI著作権訴訟でメタとアンソロピックが初勝利、今後の展開は?
- Why the US and Europe could lose the race for fusion energy 核融合でも中国が優位に、西側に残された3つの勝機
- Google’s electricity demand is skyrocketing グーグルの電力使用量が4年で倍増、核融合電力も調達へ