フラッシュ2023年4月28日
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非侵襲的な脳遺伝子治療技術、京大などが開発
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]京都大学、スペイン・神経科学統合センター(HM CINAC)、スペイン・CEUサンパブロ大学、スペイン・HMプエルタ・デル・スル大学病院、イスラエル・インサイテックの研究グループは、血液脳関門(BBB:Blood Brain Barrier)を一時的に開けて、ウイルスベクターを導入することで、脳内に外来遺伝子を発現させる治療法を開発した。脳疾患の治療では開頭手術など侵襲性が高い治療法を選択せざるを得ないことが多いが、今回開発した手法によって、脳を対象とした非侵襲的な遺伝子治療技術の発展が期待できる。
神経疾患の治療法として、ウイルスベクターを利用した全脳的な遺伝子導入手法が注目を集めているが、血液脳関門がベクターの脳への移行を妨げるという課題があった。最近の研究で、9型アデノ随伴ウイルスベクター(AAV9ベクター)とその改変型がマウスの血液脳関門を越えることが分かっているが、サルをはじめとする霊長類では血液脳関門を越えられないことが判明している。
今回はマカクザルを対象に、新たに開発したウイルスベクターを投与し、経頭蓋集束超音波照射(tFUS)とマイクロバブル(微小な泡)を利用して血液脳関門を一時的に開け、特定の脳領域に選択的かつ非侵襲的に遺伝子を導入する技術を開発した。
具体的には、事前に静脈から血液中に送り込んだマイクロバブルにtFUSで超音波を当て、バイブレーション・キャビテーション効果で特定部位の血液脳関門を一時的に開けて、血管内投与したAAV9ベクターを脳の目標部位に届け、目的遺伝子を発現させた。
研究成果は4月20日、サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)誌にオンライン掲載された。今後は実際の霊長類の疾患に、今回開発した手法が有効であるか検証し、特定の脳領域のニューロン群に、狙い通りに安全な遺伝子操作を可能にする技術の確立を目指すとしている。
(笹田)
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