フラッシュ2023年3月17日
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自然免疫シグナルSTINGの終結の仕組みを解明
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東北大学、東京大学、京都大学、久留米大学、理化学研究所、福島県立医科大学、マイアミ大学の研究グループは、自然免疫応答経路の1つであるSTING(Stimulator of interferon genes)経路のシグナルが活性化した後、終結する機構を解明した。STINGは細胞の小胞体に局在するタンパク質で、DNAウイルス感染時にゴルジ体に移動し、自然免疫シグナルを活性化させ、I型インターフェロンを誘導する。ただ、活性化したシグナルがどのように終結するかは分かっていなかった。
研究グループはまず、超高解像度ライブイメージングでSTINGとリソソーム(細胞小器官の1つ)を同時に観察。その結果、STINGはリソソームに接近した後、約30秒でリソソーム内に直接取り込まれ、約80秒で分解されていくことを確認した。さらに、光-電子相関顕微鏡法(CLEM法:Correlative Light & Electron Microscopy)でSTINGとリソソームを観察した結果、直径100ナノメートル以下のSTING小胞が複数まとまってリソソーム内に取り込まれていくことが分かった。
続いて、STINGを分解する機構を解明するために、STINGの分解を指標としたスクリーニングを実施した。その結果、リソソームがSTINGを取り込む機構を、ESCRT(Endosomal Sorting Complexes Required for Transport)タンパク質複合体が制御しており、リソソームによるSTINGの取り込みを阻害すると、STING自然免疫シグナルが終結しないことが明らかになった。
ESCRT遺伝子の変異は、さまざまな炎症性疾患や、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患の原因であることが分かっている。今回の発見で、STINGの分解に異常が発生し、自然免疫や炎症応答が持続することで、炎症性疾患や神経変性疾患を引き起こしている可能性があることが明らかになった。
研究成果は3月14日、ネイチャー・セル・バイオロジー(Nature Cell Biology)誌にオンライン掲載された。リソソームが細胞質成分を分解する機構としては、2016年のノーベル生理学・医学賞の受賞対象となったマクロオートファジーが知られているが、今回の研究で新しい細胞質分解機構が明らかになった。
(笹田)
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