フラッシュ2023年2月16日
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生物工学/医療
インフルエンザ、マスク着用や人的接触の制限で激減=東北大調査
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東北大学の研究チームは、インフルエンザの検出率と、マスク着用率、人的接触の程度、複合規制政策の間に有意な関連があったとの研究結果を発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、世界の多くの地域でインフルエンザの症例数は激減している。物理的な距離の確保、ロックダウン、マスクの着用といった、新型コロナウイルス感染症に対する非薬理学的介入(NPI:Non-Pharmaceutical Intervention)の影響が推測されているが、インフルエンザの流行とNPIの相関を統計的に示した研究はなかった。
研究チームは、WHOのグローバル・インフルエンザ監視および対応システムと、NPIについての公開済み情報を利用して、インフルエンザ流行に関係する要因の特定を試みた。対象期間は、2020年と2021年の中盤の12週間と、2020年と2021年の終盤の12週間。4期間とも、例年インフルエンザが流行しやすい時期だ。
マスク着用率や人的接触の程度、規制政策の厳しさの指標としては、ワシントン大学が公開しているデータや、「Our world in data」などの公開データを使用した。人的接触の程度の評価は、携帯電話の移動データを収集して定量化した。規制政策の厳しさは、学校閉鎖、職場閉鎖、公共行事の中止、人の集まりの制限、公共交通機関の閉鎖、自宅待機の要求、広報活動、内部移動の制限、国際的な旅行規制から評価した。
分析の結果、2020年半ばのシーズンでは、赤道周辺と南半球のほとんどの国で、マスク着用、人的接触の減少、総合的規制施策のいずれかの感染対策が実施されており、ほとんどの国でインフルエンザがパンデミック前に比べて激減していた。残り3シーズンについては、感染対策の厳しさが国ごとに大きく異なっていたが、共通してマスク着用率は高く、これがインフルエンザ検出数の低さと関連していた。
2020年半ばのシーズンでは、人的接触のレベルの低さがインフルエンザ消滅率と強い関連を示し、2021年末からのシーズンでは弱い関連を示した。複合的な規制施策のレベルの高さは、2020年末からのシーズンでのインフルエンザ消失と弱い関連があった。分析対象の12週間における新型コロナウイルス感染症の陽性数や死亡者数は、インフルエンザの検出率とは有意な関連を確認できなかった。一方で、インフルエンザの検出率とNPIの間には強い関連が確認できた。
研究成果は1月13日、ヴァイルシス(Viruses)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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