フラッシュ2022年12月3日
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安価な硫化スズで高性能薄膜太陽電池を実現できる可能性=東北大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東北大学とダルムシュタット工科大学の研究グループは、硫化スズを使った薄膜太陽電池で高い性能を引き出せる可能性を示唆する実験結果を得た。硫化スズを使った薄膜太陽電池は、地球上に豊富に存在し、安価に入手できる硫化スズを原料としていることから、薄膜太陽電池の材料として20年ほど研究が続いている。だが、変換効率は最高でも5%にとどまっていた。
硫化スズを使った薄膜太陽電池に変換効率が上がらない最大の要因は、硫化スズのバンドが界面においてほとんど曲がらない(約0.2eV)点にある。その結果、太陽電池の形にしたときに開放電圧が低くなっていた。研究グループは、n型硫化スズ単結晶の上に酸化モリブデンの薄膜を堆積し、界面における電子状態を光電子分光法で観察した。その結果、界面近傍で硫化スズのバンドが1eVも曲がることを発見した。これは、硫化スズ太陽電池にしたときに、0.7〜0.8Vの大きな開放電圧を得られる可能性があることを示している(従来の硫化スズ太陽電池の開放電圧は0.3V程度)。
この結果と合わせて、従来の硫化スズ界面の違いを比較したところ、太陽電池に適した硫化スズ界面を作るには、硫化スズ薄膜中の硫黄欠損を抑制することや、太陽電池のp型層とn型層のどちらにも硫化スズを使ったホモ接合構造を採用すべきであることがわかった。
研究成果は11月30日、ザ・ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー・C(The Journal of Physical Chemistry C)誌に掲載された。
(笹田)
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