フラッシュ2022年11月1日
-
脳型AI新理論を提案、脳のシナプスの「揺らぎ」に着想=京大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]京都大学などの共同研究チームは、生物の脳のように「揺らぐ」ニューロンとシナプスで学習を実現する新たなニューラル・ネットワークを構築した。この新しいニューラルネットワークが脳のいくつもの実験結果を再現することも発見した。
現在のニューラル・ネットワークは「最適化」という緻密な計算によって望ましい機能を実現するが、脳のニューロンやシナプスは強い「揺らぎ」を持ち、確率的に動作するため、最適化のような緻密な計算をしているようには見えない。さらに、最適化の計算には、脳とは比較にならないほど膨大なエネルギーを消費するという問題がある。
そこで研究チームは、「脳の学習は最適化ではなく、適切な具体例を生成するサンプリングではないか」と発想。確率的推定手法であるベイズ推定の理論の1つ、「ギブス・サンプリング」の理論を利用することで、脳のようにランダムなニューロンとシナプスだけで動作するニューラル・ネットワークの構築に成功した。さらに、このように構成したニューラル・ネットワークが、動物が物を見たときに脳のニューロンが示す応答の特徴など、生物の脳の揺らぎ以外の多くの性質も再現することを見い出した。
今回の研究成果は、脳のような高い柔軟性を持ち省エネルギーで動作する脳型AIの開発や、人間を含む生物の脳の仕組みの解明への波及効果が期待される。研究論文は、2022年10月21日付けで、国際学術誌フィジカル・レビュー・リサーチ(Physical Review Research)にオンライン掲載された。
(中條)
-
- 人気の記事ランキング
-
- AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
- Promotion MITTR Emerging Technology Nite #32 Plus 中国AIをテーマに、MITTR「生成AI革命4」開催のご案内
- Anthropic can now track the bizarre inner workings of a large language model 大規模言語モデルは内部で 何をやっているのか? 覗いて分かった奇妙な回路
- China built hundreds of AI data centers to catch the AI boom. Now many stand unused. AIデータセンター 中国でバブル崩壊か? 需要低迷で大量放置の実態
- This Texas chemical plant could get its own nuclear reactors 化学工場に小型原子炉、ダウ・ケミカルらが初の敷地内設置を申請