フラッシュ2022年10月24日
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リュウグウは500万年前に近地球軌道へ移動、「はやぶさ2」分析
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「はやぶさ2」チームは、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星「リュウグウ」の表層および地下物質試料の希ガスと窒素の同位体組成を測定。希ガス分析の結果によると、リュウグウは約500万年前に小惑星軌道から、天体表層への隕石衝突が少ない近地球軌道に移動したと考えられるという。
チームはリュウグウ試料16個を用いて、希ガスおよび窒素同位体を分析するための破壊分析を実施。その結果、同試料には太陽系形成時の希ガスが含まれており、その量はこれまで報告されているどの隕石よりも多いことがわかった。窒素同位体組成は試料ごとに異なっており、多様な窒素含有物質が保存されていた。太陽系形成時の始原的ガス以外にも、銀河宇宙線によって生成された希ガスと太陽風起源の2種類の希ガスも含まれていたが、太陽風起源ガスはわずかな量であったという。
銀河宇宙線起源のネオンの量からは、リュウグウの銀河宇宙線照射期間は約500万年であることが分かった。リュウグウ表面のクレーターには、近地球軌道での衝突で作られたと仮定して計算される年代(200万年から800万年)と、小惑星帯での頻繁な衝突で作られたと仮定して計算される年代(10万年から30万年)が提案されてきたが、希ガス分析の結果から得られた銀河宇宙線照射期間は前者の年代に一致した。
さらに、リュウグウ試料を真空装置内で100℃に加熱した際、100万年の照射期間に相当する銀河宇宙線起源のガスを検出。このことは、過去100万年間はリュウグウ表層物質が100℃以上の高温を経験していないことを意味するという。リュウグウ表層の中緯度域には可視分光で赤く見える物質が見つかっており、この物質はリュウグウが太陽に一時期近づいたために強い加熱を受けてできた可能性がこれまでの研究で示唆されている。赤化の原因が太陽近傍での加熱であるなら、それは100万年以上前の出来事であったことになる。
研究成果をまとめた論文は、サイエンス(Science)誌に2022年10月20日付けでオンライン掲載された。
(中條)
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