フラッシュ2022年9月8日
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EVの電費向上につながる高精度量子センサー、東工大など開発
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京工業大学と矢崎総業の共同研究チームは、±1000アンペアの電流計測レンジで10ミリアンペアの精度を有するダイヤモンド量子センサーを世界で初めて開発。電気自動車(EV)用電池の充放電電流計測に適用し、WLTC走行モードで想定される電流レンジ・変化パターンを10ミリアンペアの精度で計測できることを確認した。
研究チームはセンサーの開発に当たり、「窒素-空孔(NV)センター(炭素原子からなるダイヤモンド結晶で炭素1個が窒素に置き換わり、その窒素に空孔が隣接している構造)」を含有したダイヤモンド材料を作製する技術、蛍光強度変化を高精度に周波数変化に変換する技術、広い電流レンジでNVセンターの量子状態を操作するマイクロ波アンテナ技術、環境ノイズを低減する差動型センサ技術などを構築。さらに、複数物理量をスピンの共鳴周波数として高精度に検出できる量子センサーの特徴を生かし、電池の高信頼制御につながる電流と温度の同時計測を実現した。
今回の技術を電気自動車(EV)搭載電池のモニタリングに応用することで、現状では10%に及ぶ充放電の安全マージンを1%まで抑えられることになり、走行距離を増加させたり、同じ走行距離であれば搭載電池容量を削減したりできる。研究チームの試算によると、EV製造時のCO2排出量低減、EV軽量化による電費向上によって、2030年における運輸部門のCO2排出量を1400万トン(総量の0.2%)削減できるという。
(中條)
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