フラッシュ2022年6月10日
-
酸化LDL受容体、がん転移を促進=北大が仕組み解明
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]北海道大学の研究チームは、高転移性がん組織において酸化LDL(Low Density Lipoprotein:低密度リポタンパク質)が他臓器への転移を促進させる仕組みを解明した。酸化LDLは動脈硬化などの循環器疾患のリスク因子として知られているが、がん細胞の転移との関連は不明だった。
研究チームは、転移しやすいがん細胞と転移しにくいがん細胞をそれぞれ移植した2種類のモデルマウスを作製。酸化LDLの沈着や酸化LDLの受容体分子、好中球などの酸化LDL形成に関わる免疫細胞の局在や分布量を調べた。その結果、転移しやすいがん細胞を移植したマウスでは、酸化LDLと、その受容体であるLOX-1(Lectin-like Oxidized LDL Receptor-1:レクチン様酸化LDL受容体)の発現量が高かった。
それに伴い、腫瘍組織中では好中球が多く確認でき、血管内皮細胞でLOX-1が過剰に発現すると、好中球の遊走を促進してしまうことも分かった。LOX-1の発現を抑制したモデルマウスでは、がんの転移は確認できなかったという。
研究成果は5月24日、「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(International Journal of Cancer)」誌にオンライン掲載された。今後、LOX-1阻害が新たながん治療法になる可能性がある。
(笹田)
-
- 人気の記事ランキング
-
- Anthropic can now track the bizarre inner workings of a large language model 大規模言語モデルは内部で 何をやっているのか? 覗いて分かった奇妙な回路
- Promotion MITTR Emerging Technology Nite #32 Plus 中国AIをテーマに、MITTR「生成AI革命4」開催のご案内
- AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
- This Texas chemical plant could get its own nuclear reactors 化学工場に小型原子炉、ダウ・ケミカルらが初の敷地内設置を申請
- Tariffs are bad news for batteries トランプ関税で米電池産業に大打撃、主要部品の大半は中国製