フラッシュ2022年2月12日
-
成熟膵島細胞の増殖に成功、糖尿病根治の可能性開く=東大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東大などの研究グループは、マウスを使った実験で、成熟した膵島細胞の自己増殖に成功。糖尿病マウスの血糖値の改善を確認した。糖尿病の根治を目指す再生治療の開発が期待される。
成熟膵島細胞は自己増殖能を持たないため、細胞が減少し機能が低下すると糖尿病を発症し、完全に回復することはない。研究グループはまず、出生前後の膵島細胞が活発に増殖することに着目し、胎生期のマウスの膵臓を対象に1細胞遺伝子発現解析を実行。膵島細胞でMYCL遺伝子が発現していることを確認した。ヒトiPS細胞から膵島細胞様細胞への分化の過程でもMYCL遺伝子が一時的に発現していることも分かったという。
次に、成体マウスから単離した膵島細胞を対象に、試験管内でMYCL遺伝子の発現を誘導したところ、活発な細胞増殖を確認。加齢マウスの膵島細胞、ヒト脳死ドナー由来膵島細胞、マウスの生体内の膵島細胞でも、MYCL遺伝子による膵島細胞の自己増殖を確認した。
さらに、薬剤を使って糖尿病にさせたマウスを用意し、生体内でMYCL遺伝子の発現を誘導した。その結果、遺伝子発現誘導後に血糖値の改善を確認している。単離した膵島細胞を試験管内でMYCL遺伝子を発現させて増殖させ、糖尿病マウスに移植した結果でも血糖値が改善したという。
研究成果は2月10日、ネイチャー・メタボリズム(Nature Metabolism)にオンライン掲載された。
(笹田)
-
- 人気の記事ランキング
-
- The 8 worst technology failures of 2024 MITTRが選ぶ、 2024年に「やらかした」 テクノロジー8選
- Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 無料イベント「U35イノベーターと考える研究者のキャリア戦略」のご案内
- Bringing the lofty ideas of pure math down to earth 崇高な理念を現実へ、 物理学者が学び直して感じた 「数学」を学ぶ意義
- The humans behind the robots 家事ロボット、実は8割は遠隔操作 あなたは受け入れられますか?
- Three pieces of good news on climate change in 2024 2024年の気候シーンを振り返る:見えてきた明るい兆し