天然ガスは当面、世界の主要エネルギー源としての地位が固定されている。安価で容易に手に入る天然ガスによる発電量は、米国電力の30%以上、世界の電力の22%を占める。石炭よりクリーンエネルギーだとはいえ、大量の二酸化炭素を排出することに変わりはない。
米国石油・石油精製産業の中心地、ヒューストン郊外にある試験プラントが、天然ガス由来のクリーンエネルギーを作るテクノロジーを現実化すべく試験を実施している。この50メガワットのプロジェクトを進めるネット・パワー(Net Power)は、少なくとも標準的な天然ガス火力発電所と同程度のコストで発電でき、基本的に発電の過程で発生したすべての二酸化炭素を回収できると考えている。
もしそれが可能ならば、人類は妥当なコストで化石燃料から無炭素エネルギーを作り出す方法を見つけたことになる。こういった天然ガス火力発電所は需要に応じて発電量を調整でき、原子力発電の高い資本コストと、再生可能エネルギーの不安定な供給を避けることができる。
ゼロカーボン天然ガス
- ブレークスルー
- 温室効果ガス排出量を抑えながら、天然ガスを燃やすことで放出される二酸化炭素を低コストで効率的に回収する発電所。
- なぜ重要か
- 米国の電力のおよそ32%は天然ガスで発電されている。これは、電力産業の二酸化炭素排出量の約30%を占める。
- キー・プレーヤー
- エイト・リバース・キャピタル(8 Rivers Capital)、エクセロン・ジェネレーション(Exelon Generation)、CB&I
- 実現時期
- 3〜5年
ネット・パワーは技術開発会社であるエイト・リバース・キャピタル(8 Rivers Capital)とエクセロン・ジェネレーション(Exelon Generation)、エネルギー建設会社CB&Iの提携によって設立された。ネット・パワーは現在発電所を稼働させようと、最初の試験運転を始めたところだ。数カ月の内に早期評価の結果が発表される予定だという。
発電所では、高圧・高温下で燃焼させた天然ガスから二酸化炭素を排出し、超臨界二酸化炭素を特別に作られたタービンを動かす「作動流体」として使う。大量の二酸化炭素を常にリサイクルすることができ、残りは安価に回収できる。
コスト削減の重要なポイントは、この二酸化炭素の売却にかかっている。現在、主な使い道は油井からの石油抽出だ。市場は限られていて、クリーンエネルギーでもない。だが、ネット・パワーは最終的には、セメント産業における二酸化炭素の需要と、プラスチックや他の炭素系材料を製造する企業における需要の高まりを見込んでいる。
ネット・パワーのテクノロジーは、天然ガス関連のすべての問題(特に抽出分野)を解決するわけではない。ただ天然ガスを使うのであれば、できるだけクリーンにすべきだ。開発段階のクリーンエネルギー関連テクノロジーの中で、ネット・パワーのテクノロジーが二酸化炭素排出削減において最も進んでいる。
(ジェームズ・テンプル)