センシング・シティ

Sensing City センシング・シティ

by MIT Technology Review Editors2018.03.06
SIDEWALK TORONTO

スマートシティ建設の多くが遅れている。意欲的だった目標がトーンダウンするか、超富裕層以外の住民が閉め出されているのが現状だ。キーサイド(Quayside)と呼ばれるトロントの新しいプロジェクトでは、都市を徹底的に考え直し、最新のデジタルテクノロジーをもとに再構築することで、この失敗のパターンを変えようとしている。

アルファベット(グーグル)傘下のサイドウォーク・ラボ(Sidewalk Labs=本社ニューヨーク市)は、トロントの臨海工業地区に建設予定のハイテク・プロジェクトをカナダ政府と協力して進めている。

センシング・シティ

ブレークスルー
トロントの近郊都市では、最新デジタル技術を駆使した最先端の都市設計を世界で初めて完成させようとしている。
なぜ重要か
スマートシティによって、都市部でも手に入りやすく、また住みやすく環境に優しい地域となる。
キー・プレーヤー
サイドウォーク・ラボとウォーターフロント・トロント
実現時期
プロジェクトは2017年10月に発表された。2019年には建設が始まる予定だ。

プロジェクトの目標の1つは、大気環境から人々が作り出す騒音レベルまで、あらゆる情報を巨大なセンサーのネットワークによって収集し、それに基づいて都市設計や政策、テクノロジーに関して決定することだ。

計画では、すべての車両は自律運転車となり、住民に共有される予定だ。ロボットが地下で動き回り、郵便配達などの雑用をこなす。サイドウォーク・ラボによれば、同社開発のソフトウェアやシステムへのアクセスをオープンにし、まるでモバイルアプリのようにサードパーティ企業がサービスを構築できるによる予定だという。

サイドウォーク・ラボは公共インフラを注意深く監視する予定だが、そのためにデータ管理やプライバシーについての不安が広がっている。だが、サイドウォーク・ラボは、コミュニティや地方政府と協力して不安を緩和できると考えている。

「キーサイドでの試みで特徴的なのは、このプロジェクトが並外れて意欲的であるだけでなく、控えめでもある点です」と、サイドウォーク・ラボの都市計画担当役員のリット・アガーワラはいう。こうした謙虚さによって、これまでのスマートシティ構想では悩みの種だった落とし穴をキーサイドでは回避できるかもしれない。

キーサイドでの開発を監督する公的機関のウォーターフロント・トロント(Waterfront Toronto)によれば、すでに米国の多くの都市でサイドウォーク・ラボの次の候補地になりたいとの声が上がっているという。「サンフランシスコやデンバー、ロサンゼルス、ボストンなどから説明してほしいとの要望があります」(ウォーターフロント・トロントのウィル・フライセグCEO)。

(エリザベス・ウォイキ)

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