Enhanced geothermal systems: 10 Breakthrough Technologies 2024 地熱増産システム
地熱発電は再生可能エネルギー源として有望だが、これまでは特定の条件を満たす場所でのみ可能であった。だが、先進的な掘削技術により、新たな場所の地熱を利用して、電力生産量を劇的に増やせるかもしれない。
by June Kim 2024.01.19- キープレイヤー
- アルタロック・エナジー(AltaRock Energy)、ファーボ・エナジー(Fervo Energy)、ユタFORGE研究所(Utah FORGE lab)
- 実現時期
- 3~5年後
豊富に存在し、二酸化炭素を排出しない地熱は、化石燃料に代わる、天候や時間帯に左右されないエネルギー源である。しかし、従来の地熱発電所は、特定の地質条件、特に水源のある浸透性の岩石を必要とする。
それが原因となり、地熱は世界の再生可能エネルギー発電能力の1%も占めていない。しかし、あるエマージング・テクノロジー(萌芽技術)によって、足元にある熱をもっと活用できるようになるかもしれない。
地熱増産システムは、1970年代から開発が進められてきたが、最近の進歩により、再生可能エネルギーの生産を劇的に増やせる可能性がある。ファーボ・エナジー(Fervo Energy)は昨年、ネバダ州でそのようなシステムのテストをして商業的な実行可能性を証明した。同社はユタ州でも別のプロジェクトを建設しており、2026年までに一定量の低炭素電力を安定供給することを目標としている。
地熱増産システムを使えば、企業は新たな場所の地熱を利用することが可能になる。現在、石油・ガス業界で広く利用されている水圧破砕技術を使って、既存の地熱井よりもはるかに深い場所にある比較的固い岩石を割り、そこに水を注入して蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して発電するのだ。
ファーボはさらに、地熱増産テクノロジーを利用して、送電網のために、本質的に巨大地下バッテリーとも呼べるものも作ろうとしている。井戸の圧力を上げたり弱めたりすることで、需要が低いときにはエネルギーを蓄え、需要が高まったときには発電量を増やせる仕組みだ。
このテクノロジーに潜在的なリスクがないわけではない。特に、水圧破砕が地震活動に及ぼす影響については、科学界でも意見が分かれている。地震リスクは最小限という意見がある一方で、2017年に韓国で起きた事故は、地熱増産プロジェクトと関連していた。
現在、他にもいくつかの企業や研究所が、この分野のパイロット・プロジェクトや研究を進めている。ワシントンに本社を置くアルタロック・エナジー(AltaRock Energy)は、極めて高温の岩石にアクセスするための特殊技術を開発中である。この技術は、エネルギー出力を劇的に向上させる可能性がある。米国エネルギー省が後援するユタFORGE研究所は、地熱増産テクノロジーのための試験台の役割を果たせる井戸を掘削している。これらのプロジェクトの多くはまだ実験段階だが、強化地熱システムがエネルギー界のホットな話題であることは、ますます明確になりつつある。
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