オープンAIが2022年11月に「チャットGPT(ChatGPT)」という無料のWebアプリをリリースしたとき、何が起こっているのか分かっている人はいなかった。しかし、さして話題になることもなく控えめにリリースされたチャットGPTはすべてを変えてしまった。
2023年1月には、チャットGPTは史上最も急成長したWebアプリになり、ブラウザーさえあれば誰でも、これまでで最も強力なニューラル・ネットワークにアクセスできるようになった。私たちは圧倒され、動揺した。
しかし、それはほんの始まりにすぎなかった。2023年2月、マイクロソフトとグーグルは、チャットボットと検索を組み合わせるという、競合する計画を明らかにした。これは、インターネットとの私たちの日常的なやり取りを再考する計画だった。
初期のデモの出来はあまり良いものとは言えなかった。マイクロソフトの「ビング・チャット(Bing Chat)」はすぐに脱線し、無意味なことをしゃべった。グーグルの「バード(Bard)」には、宣伝文句に事実誤認があったことが発覚した。しかし、それらがどんなに奇妙なものであったとしても、もう後戻りはできなかった。
マイクロソフトとグーグルはそれ以降、検索の枠を超えて、オフィス・ソフトウェアを通じて何十億もの人々の手にチャットボット・ベースのアシスタントを届けるようになった。この技術は電子メールや会議を要約し、報告書や返信の下書きをし、タイトル、箇条書き、写真を含むスライドデッキ全体を数秒で生成できると謳う。
マイクロソフトとメタは、ユーザーがクリック1つで、共有可能な画像を何でも生成できる画像作成モデルをリリースした。すると、滑稽なマッシュアップ画像がノンストップで氾濫し、ミッキーマウスやスポンジ・ボブが飛行機でツインタワーに突っ込むという画像が、何十件も投稿されるようになった。
グーグルの新しいスマートフォンでは人工知能(AI)を使用して、悲しげな表情を幸せな表情にしたり、曇り空の午後を完璧な夕焼けにしたりするなど、これまでにないレベルで写真を編集できるようになった。
これほど急進的な新技術が、これほど迅速かつ大規模に実験用プロトタイプから消費者向け製品に移行したことはかつてなかった。明らかなのは、私たちはそのすべてを理解するどころか、その影響について考え始めてさえいないということである。
AIの勢いは衰え始めているのだろうか? その可能性はある。リリースごとに、驚きはより凡庸なものになってきている。しかしAIが2023年に残した遺産は明らかだ。何十億もの人々がAIを直視するようになったのだ。そして私たちは今、何を振り返っているかを正確に把握する必要がある。