KADOKAWA Technology Review
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生命の再定義

A pill for covid 新型コロナ飲み薬

新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ飲み薬は、次のパンデミックとの闘いでも役立つ可能性がある。米政府はすでにこの新薬を100億ドル分発注済みだ。

by Antonio Regalado 2022.04.11
Andrea D'aquino
キープレイヤー
ファイザー、メルク、パルデス・バイオサイエンシズ(Pardes Biosciences)
実現時期
実現済み

米国のドナルド・トランプ前大統領が服用した抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンや、中毒センターへの相談の急増を引き起こした馬用駆虫薬のイベルメクチンのことを覚えているだろうか? これらの薬は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)には効果がなかった。しかし、効果があってほしいと人々は切実に願っていた。人々が夢見ていたのは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を消し去ってくれる飲み薬だった。

そして今、新型コロナウイルスをブロックするためにいちから作られた本物の飲み薬が登場した。そして、この飲み薬には効果がある。ファイザーの抗ウイルス薬を感染後、数日以内に投与すると、入院の可能性を89%下げることができる。米政府はすでにこの新薬「パクスロビド(Paxlovid)」を100億ドル分発注済みだ。

この新しい経口薬の開発が成功したのは、まぐれ当たりではなかった。化学者たちは、新型コロナウイルスの複製機能を妨げるための薬を作ったのだ。この薬は、新型コロナウイルスの脅威的な複製機能において中心的な役割を果たしている「プロテアーゼ」というタンパク質を狙ってブロックする。

同様のプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が他の種類のコロナウイルスにも存在する。つまり、ファイザーの薬は、次のパンデミックに対する防御策にもなり得る。そして科学者たちは、コウモリの洞窟や工業的畜産農場には新型コロナウイルスのような病原体がもっと多く潜んでいることを確信している。

ほかに、新型コロナウイルスの複製における別のメカニズムを標的とするメルク(Merck)の抗ウイルス薬もある。これらの新しい抗ウイルス薬は、設計、合成、テストに、ワクチンよりも長い期間を要した。しかし、それでも記録的なスピードであった。ある病気に対抗するための全く新しい分子が、化学者の実験台からこれほど早く治験参加者の口に入り、米国食品医薬品局(FDA)の認可を得たことはかつてないことだ。ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は、この薬に効果があったという知らせを2021年11月に受けたときは「涙が出た」と語っている。

この飲み薬によって、免疫系の働きが低下してワクチンが効かない人を含め、多くの人が新型コロナウイルスによる死亡を回避できるようになる。ワクチンが効かない新しい変異株が現れた場合には、抗ウイルス薬が最後の手段になるかもしれない。

「ブレークスルー・テクノロジー10」2022年版の一環として、新型コロナ飲み薬の開発過程と今後の展開についてこちらで紹介している。

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