ビットコインのような暗号通貨は大量のエネルギーを消費する。2021年に、ビットコインのネットワークは100テラワット時を超えるエネルギーを消費した。フィンランドの一般的な年間エネルギー消費量を上回る量だ。
「プルーフ・オブ・ステーク(PoS:Proof of Stake)」と呼ばれる手法を使えば、これほど多くのエネルギーを必要としないネットワークを構築できる。さまざまなアプリケーションのプラットフォームとなっており、世界第2位の暗号通貨でもあるイーサリアムは、計画が順調に運べば、2022年前半にプルーフ・オブ・ステークに移行する予定だ。プルーフ・オブ・ステークへの移行で、消費電力が99%削減されると見込まれている。
暗号通貨は、チート行為、詐欺行為、ハッキング行為からユーザーを保護するために、ブロックチェーンと呼ばれるデジタル台帳を用いて取り引きされている。ビットコインとイーサリアムは現在、セキュリティ確保のために「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」アルゴリズムを採用している。プルーフ・オブ・ワークでは、暗号通貨の採掘者(マイナー)が新たな取り引きのブロックを検証する権利をかけて暗号パズルを解く競争をする。競争に勝利した採掘者には、作業の報酬として暗号通貨が与えられる。
だが、プルーフ・オブ・ワーク・パズルの答えを探すには、膨大な計算能力と、それに伴う大量の電力が必要となる。
プルーフ・オブ・ステークでは、検証者(バリデーター)は互いに競い合う必要がない。したがって、エネルギーとコンピューター・ハードウェアに大金を費やす必要もない。その代わりに、保有する暗号通貨の保有量、つまりステークにより、抽選に参加できる。当選すると、一連の取り引きを検証する権利が与えられ、より多くの暗号通貨を獲得できる仕組みだ。一部のネットワークでは、不正をした検証者は、ペナルティを科せられ、一部のステークを没収される。
イーサリアムはプルーフ・オブ・ステークを採用する最大のネットワークになる予定だ。イーサリアムはすでに新システムに向けた新しいブロックチェーンを開発しており、これまでのブロックチェーンと並行して稼働させている。残るは、取り引きを実際に実行してユーザーの資産を保有しているレイヤーを引き継ぐ「ザ・マージ(統合)」というプロセスである(その過程でプルーフ・オブ・ワークの使用をやめる)。
うまくいけば、イーサリアムのプルーフ・オブ・ステーク・ブロックチェーンは、省エネ・テクノロジー普及の基盤をつくるかもしれない。他のネットワークもプルーフ・オブ・ワークからプルーフ・オブ・ステークへの移行を検討しているが、様子見のアプローチを採っているようだ。