クライムワークス(Climeworks)は2021年9月、「オルカ(Orca)」と呼ばれるプラントを始動させた。オルカは、空気中の二酸化炭素を除去するプラントとしては過去最大規模を誇る。
アイスランドのレイキャビク郊外にある同プラントでは、年間4000トンの二酸化炭素を回収できる。大型ファンで吸引した空気をフィルターに通し、二酸化炭素分子を他の物質に結合させる。次に、同社のパートナーであるカーブフィックス(Carbfix)が、二酸化炭素を水と混ぜてポンプで地下に送り込み、玄武岩と反応させて最終的には石に変える。同プラントは、主に近隣の地熱発電所から供給されるカーボンフリーの電力だけで運営されている。
確かに、年間4000トンはそれほど多くない。自動車900台分の年間排出量よりも少ない。また、さまざまな研究によると、地球温暖化で気温が産業革命以前の水準から2℃以上上昇するのを防ぐためには、地球全体で数十億トンの二酸化炭素を大気中から除去しなければならないとされている。4000トンはごく一部に過ぎない。
さらに大規模な二酸化炭素回収プラントも計画されている。ブリティッシュコロンビア州スコーミッシュに拠点を置くカーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)は2022年に、二酸化炭素を年間100万トン除去できる工場を、米国南西部で建設開始する予定だ。同社はまた、さまざまなパートナーとともに、スコットランドとノルウェーで、年間50万トンから100万トンの二酸化炭素を捕捉するプラントの計画作成や設計の作業を開始している。
大気中の二酸化炭素を回収するプラントをどんどん増やしていくことで、これらの企業は運用を最適化し、コストを下げ、いずれはスケールメリットを実現できるはずだ。クライムワークスは、大気中から二酸化炭素を回収するのに現在1トン当たり600ドルから800ドルかかっているのを、2030年代後半までに100ドルから150ドル程度に減らせると試算している。
すでにマイクロソフト、ストライプ(Stripe)、スクエア(Square)など、現在の高いコストを支払ってでも二酸化炭素を吸収し、排出量を相殺しようとする企業や個人も増えている。そうした企業が初期の重要な収益源になっている。