KADOKAWA Technology Review
×
MITTRが選ぶ35歳未満のイノベーター「IU35 2024 Japan」発表!
11/20授賞式開催決定
開拓者
35歳未満のイノベーター[日本版] 2022開拓者
イノベーションによって新産業を生み出す。

Shuichi Katsumata 勝又秀一 (31)

所属: 産業技術総合研究所/PQシールド(PQShield)

来たるべき量子コンピューター時代を見据え、「耐量子暗号」の開発で世界をリードする暗号研究者。

大規模量子コンピューターの実用化へ向けた研究開発が国際的に加速している。期待の一方で危惧されているのが、量子コンピューターの実用化によって、従来のコンピューター(古典コンピューター)では解読に膨大な時間がかかるため安全だとみなされている現在の暗号が、破られてしまうのではないか、ということである。

そこで、喫緊の課題として持ち上がっているのが、量子コンピューターに対しても安全性が保証される「耐量子計算機暗号」の開発である。勝又秀一(Shuichi Katsumata)は、「シグナル(Signal)プロトコル」と呼ばれる、世界で2億人の利用者がいる最も代表的なセキュア・メッセージング・プロトコル(SMP)の耐量子計算機安全化の完成に初めて成功した研究者である。さらに、インターネット・エンジニアリング・タスクフォース(Internet Engineering Task Force:IETF)で標準化が進む次世代SMPの安全性とスケーラビリティを大幅に高める手法を確立するなど、SMPが抱える課題を先進的なアイデアで解決してきた。

スラック(Slack)やライン(LINE)に代表されるメッセージング・ツールは、人々の私生活からビジネスにまで浸透しており、今や、利用者の最も多い情報通信形態の一つとなっている。その一方で、個人情報の漏洩や悪用などの深刻なプライバシー・リスクの存在も指摘されている。SMPは、この解決策として近年注目されている次世代プライバシー保護技術だが、量子耐性を備えた設計手法は知られておらず、スケーラビリティの課題も抱えていた。勝又のイノベーションは、多くの人々の通信のプライバシーを守るだけでなく、情報社会で利用される多種多様な全ての通信を、量子計算機の脅威から完全に守るための足掛かりとなるだろう。

(中條将典)

人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  3. AI will add to the e-waste problem. Here’s what we can do about it. 30年までに最大500万トン、生成AIブームで大量の電子廃棄物
  4. This AI system makes human tutors better at teaching children math 生成AIで個別指導の質向上、教育格差に挑むスタンフォード新ツール
人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  3. AI will add to the e-waste problem. Here’s what we can do about it. 30年までに最大500万トン、生成AIブームで大量の電子廃棄物
  4. This AI system makes human tutors better at teaching children math 生成AIで個別指導の質向上、教育格差に挑むスタンフォード新ツール
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る