長年にわたり気候変動対策が遅れてきた結果、各国は今、温室効果ガスの排出を劇的に削減するだけでなく、すでに大気中に蓄積された二酸化炭素(CO₂)を大規模に除去する手段を確立する必要に迫られている。
研究によると、地球温暖化を抑制し、安全な状態に戻すためには、2050年までに毎年数十億トン規模のCO₂を回収し、安全に貯蔵する必要があるとされている。
ノア・マックイーン(28歳)は、この課題を解決するため、2020年に「エアルーム・カーボン・テクノロジーズ(Heirloom Carbon Technologies)」を共同設立し、コストを削減しつつ、CO₂除去施設の規模を拡大することを目指している。
コロラド鉱山大学の学部生だった頃、マックイーンは数学と科学の知識を活かし、「自分の力を超えた大きな影響を与えられる方法」を探していた。その中、産業施設からのCO₂回収や大気中のCO₂直接回収(DAC)といった先駆的な研究をしていた化学工学教授のジェニファー・ウィルコックスと出会い、この分野での貢献を決意した。
その後の数年間、マックイーンはCO₂除去の新しい手法を開発し、既存の自然界のプロセスを加速させるアプローチにたどり着いた。この技術は、すでに年間5億トン以上のCO₂を自然に吸収している岩石の風化作用に着想を得ている。
その鍵は、自然のプロセスを大幅に高速化することだ。エアルームの手法では、粉砕した石灰石を加熱し、CO₂を放出させた後、水を加えて水酸化カルシウムを生成する。この物質はCO₂を吸収しやすい「スポンジ」のような役割を果たす。次に、薄い層状の水酸化カルシウムを空気にさらしたトレイに積み重ねると、数日以内に大気中のCO₂と反応し、再び石灰石へと変化する。このプロセスを繰り返すことで、効率的なCO₂回収が可能になる。
エアルームは、回収したCO₂の大部分を地下深くに注入し、永久的に貯蔵する計画だ。一方で、一部のCO₂はコンクリートなどの建材に活用し、数十年間にわたって大気から隔離する。
同社は、数千万ドル規模のベンチャーキャピタルからの投資を獲得し、現在カリフォルニア州で年間1000トンのCO₂を除去するプラントを稼働させている。さらに、ルイジアナ州で年間32万トンのCO₂を除去・貯蔵可能な2つのプラントを建設中であり、そのうちのより大規模なプラントは、米国エネルギー省(DOE)の直接空気回収ハブ・プログラムの資金支援を受けている。
エアルームは、同様の技術を開発する他の企業と一線を画している。それは、回収したCO₂を石油増産(EOR:Enhanced Oil Recovery)に利用しないことを明確に打ち出している点である。同社はまた、石油・ガス業界からの資金提供を受けない方針も貫いている。
今後、エアルームはさらなる施設の開発を続け、2035年までに累計10億トンのCO₂を除去・貯蔵することを目標としている。マックイーンは、このプロセスを改良しながら、最もコスト効率の高いCO₂除去技術の1つとして確立できると確信している。