ティム・ラティマー(ファーボ・エナジー)

Tim Latimer ティム・ラティマー(ファーボ・エナジー)

シェールガス革命の技術革新をヒントに、地熱発電の大規模化に取り組む。 by James Temple2025.02.27

テキサス南部のシェールガス採掘現場で掘削技術者として働いていたとき、ティム・ラティマー(34歳)はあることに気づいた。天然ガスのフラッキング(水圧破砕)技術の進歩が、地熱エネルギーの可能性を大きく変えるかもしれないということだった。

地熱発電は、地殻内の高温の岩石を利用して水を循環させることで、二酸化炭素(CO₂)を排出せずに24時間発電できる。しかし、この分野は長らく、地下の比較的浅い場所に多孔質で透水性の高い高温岩盤が存在する地域に限られていたため、大規模な商業化が困難だった。

半世紀前、ロスアラモス国立研究所の科学者たちは、ニューメキシコ州フェントンヒルで、地下岩盤を人工的に割って透水性を作り出すことで、地熱エネルギーを利用できる可能性を示した。しかし、このような「地熱増産システム(EGS)」の商業化は、技術的な課題とコストの高さから長年実現しなかった。

ラティマーは、天然ガス業界が水平掘削技術と油圧破砕技術のコストを劇的に削減した成功例を見て、このアプローチを地熱エネルギーに応用すれば、より多くの地域で地熱発電を可能にできると考えた。この技術革新が実現すれば、電力網に安定的なクリーン・エネルギーを供給し、風力や太陽光発電の変動を補うことで、石炭や天然ガスの発電所への依存を減らせる。

スタンフォード大学のMBA課程で、ラティマーは同じ考えを持つ研究者、ジャック・ノルベックと出会った。ノルベックはロスアラモス国立研究所の実験を詳しく分析し、地熱エネルギーの可能性を見出していた。2人は2017年にファーボ・エナジー(Fervo Energy)を共同創業した。

設立後すぐに、彼らは米国エネルギー省(DOE)が支援する起業家フェローシップ「サイクロトロン・ロード(Cyclotron Road)」の初年度生に選ばれ、その後ビル・ゲイツの「ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)」から資金提供を受けた。

ラティマーが最高経営責任者(CEO)を務めるファーボ・エナジーは急成長を遂げている。2023年夏、同社はネバダ州ウィンネムッカ近郊で開発した地熱井が商業的に実用可能であることを示す初期テスト結果を発表した。これらの井戸は現在、最大3.5メガワットの電力(約3500世帯分)を州の電力網に供給しており、大部分をグーグルが購入し、ラスベガス周辺のデータセンターの運営に活用している。

2023年秋には、ユタ州で「プロジェクト・ケープ(Project Cape)」という新しい地熱発電所の開発プロジェクトをはじめた。最大400メガワットの発電能力を持つこの施設の電力は、主にカリフォルニア南部の家庭や企業に供給される予定だ。2024年夏には、ファーボ・エナジーがグーグルおよびネバダ州の主要電力会社「NVエナジー(NV Energy)」と提携し、新たな地熱発電所の開発を進めることも発表された。

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