クラウディア・セア(マサチューセッツ工科大学)

Claudia Cea クラウディア・セア(マサチューセッツ工科大学)

イオン・トランジスターを用いた柔軟な脳コンピュータ・インターフェースの開発。 by Russ Juskalian2025.02.25

脳コンピュータ・インターフェース(BCI)は、視覚を失った人々に部分的な視覚を回復させたり、てんかんなどの疾患を監視するために使われている。しかし、これらのデバイスは通常、短期間しか使用できず、最終的に体内から取り外される必要がある。

その理由の1つは、BCIがシリコンチップに依存していることにある。シリコン製のデバイスは体内で劣化しやすく、免疫系によって拒絶されることがある。また、剛性が高いため、ずれやすく、組織を傷つけることもある。さらに、これらのデバイスを動作させるには、大きなバッテリーや有線接続が必要であり、頭蓋内に埋め込むには実用的でない。

クラウディア・セア(33歳)は、この問題を解決するために、シリコンチップの代わりにポリマーを使用するというアプローチを取った。彼女は、イオンゲート型有機電気化学トランジスター(OECT)を基盤とした、世界初の柔軟な神経記録デバイスを開発した。このトランジスターは、従来の電子回路のように純粋な電気信号ではなく、イオン(電荷を帯びた原子)の移動を利用する。

イオンを利用するトランジスターは以前から存在していたが、脳の信号をリアルタイムで記録するには速度が遅すぎた。「有機イオンベースのトランジスターがシリコンより遅いのは、スイッチの切り替えにイオンの移動が必要だからです。イオンが体内からトランジスターの裏側(チャンネル領域)まで移動しなければなりません」とセアは説明する。「私はトランジスター内にイオンリザーバー(貯蔵層)を作ることで、イオンの移動距離を大幅に短縮しました」。

次に、セアはデータ処理、通信、電力供給の各モジュールを設計し、これらすべてをイオンを含むポリマー素材で構成した。このアプローチの大きな利点は、イオンベースの信号が人体組織内を伝播できることにある。つまり、彼女の開発したインプラントは、頭蓋内部からワイヤレスで通信し、頭蓋の内外に配置した金端子を介して電力を供給することが可能になる。