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Karen Sarkisyan カレン・サルキシャン (34)
世界初の「発光する植物」を開発、商品化に成功。科学研究への応用を目指す。
「Firefly(ホタル)」と名付けられた発光するペチュニアは、市販されている初のバイオテクノロジー観葉植物の一つであり、唯一の暗闇で光る植物である。米国ではライトバイオ(Light Bio)というスタートアップが販売しているが、この技術はロシアで開発された。研究を主導したのは、モスクワ出身で現在ロンドンのMRC医学研究所(MRC Laboratory of Medical Sciences)で合成生物学の研究室を率いるカレン・サルキシャン(34歳)である。
発光する生物は存在するが、植物は自然には光らない。しかし、「もし植物が光ることができたら?」と想像すると、映画『アバター』のように、月明かりのように優しく輝く庭園を思い描くことができる。「発光する植物を作りたかったのです」とサルキシアンは語る。「ですが、それを実現する技術が存在しないことに気づきました」。
転機となったのは、ロシア科学アカデミーの研究チームが、熱帯性のキノコが暗闇で発光する仕組みを解明したことだった。 サルキシャンはこの研究を基に、発光を可能にする遺伝子を特定した。そして最終的に、わずか5つの遺伝子のセットを植物に組み込むことで、どんな植物でも光らせることができる技術を開発した。彼はこれを「遺伝子組み込みによって導入可能な生物発光」と表現している。
発光する植物は単におもしろいだけではない。それは本格的な科学でもある。 サルキシャンは、この技術を利用することで、植物がホルモンを生産する様子や、害虫の攻撃にどのように反応するのかをリアルタイムで観察できることを発見した。「次のステップは、このシステムを植物の生理学研究に応用することです。この技術を使えば、植物の状態を簡単に可視化できます」。
発光する植物は、ビジネスとしても有望だ。 ライトバイオの発光ペチュニア(1株29ドル)は、数カ月で完売した。同社の主任科学者であるサルキシャンは現在、「月明かりのような淡い輝きから、発光強度を2倍に向上させる」ことを目指している。「想像以上に成功しました。そして、今のところ競争相手はいません」と彼は言う。
さらに、彼らの研究チームは特許を申請しており、この技術をライトバイオが独占的に製造できる可能性がある。これは、発光する植物の市場において、同社が圧倒的な優位性を確立することを意味する。
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