KADOKAWA Technology Review
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35歳未満のイノベーター35人 2024ロボット工学
生成AIの進歩により、ロボットの性能向上が加速している。この技術革新を活用し、ロボットの訓練や世界の理解をより効率的に行えるようにしているイノベーターたちを紹介する。

Fangyu Zhang ファンユー・ジャン (34)

所属: テキサス大学サウスウェスタン医療センター(UT Southwestern Medical Center)

肺炎などの感染症を治療するために、体内に薬剤を届けるバイオロボットを開発。

ファンユー・ジャン(34歳)は、自走可能な単細胞微細藻類を泳ぐバイオロボット群(スワーム)へと作り変え、細菌性肺炎やその他の感染症の治療に使えるようにした。このバイオロボットは最終的には体内で自然に分解される。現在、彼は同様のアプローチをがん治療にも応用する研究を進めている。

この手法は、静脈に投与する抗生物質や化学療法よりも多くの利点がある。例えば、肺炎治療の場合、従来必要だった抗生物質の投与量を99.9%以上削減できることが、マウス・モデルでの研究で示された。また、化学療法薬を搭載したバイオロボットをがん細胞の標的にすることで、従来の静脈投与に比べて副作用を軽減しながら、治療の成功率を向上できる可能性がある。

ジャンの技術革新は、いくつかの重要なステップを踏んでいる。まず、ジャンらのチームは消化管や肺の環境に耐えられる薬剤コーティングのナノ層を開発した。次に、この薬剤コーティングを「クラミドモナス・ラインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)」という微細藻類の表面に付着させた。この微細藻類は、2本の鞭毛(フラジェラ)を振動させて移動する。あとは自然の力に任せるだけだ。薬剤をまとったバイオロボットは気管や食道に適用され、正確な標的に向かって自律的に泳いでいく。

「肺では、約72時間で微細藻類が完全に分解されます」とジャンは説明する。

ジャンの開発したアプローチは、単なる1つの治療法ではなく、汎用性のある「バイオロボット・プラットフォーム」でもある。「微細藻類の表面には、多くの官能基(化合物の特徴的な反応の原因となる原子や原子団)があり、それを活用することで特定の細胞を標的にできます」。例えば、特定のモジュールを組み込むことで、がん細胞だけに結合し、健康な細胞を回避することも可能になる。

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