テック企業は、より大きくより優れた人工知能(AI)モデルの構築を競う中、汚い秘密を隠している。AIシステムのカーボン・フットプリントだ。AIシステムは構築と実行にエネルギーと水を大量に必要とし、運用開始後には1日に数トンの二酸化炭素を排出する可能性がある。
AIスタートアップ企業であるハギング・フェイス(Hugging Face)の研究者、サーシャ・ルッチオーニは、AI言語モデルのカーボン・フットプリントをテック企業が推定し、測定するための優れた方法を開発した。ルッチオーニの方法を用いれば、エネルギー、材料、訓練に要する計算能力などAIシステムのライフサイクル全体を通じて、気候変動の原因となる二酸化炭素の排出量を計算できる。例えばルッチオーニのチームは、ハギング・フェイスのAI言語モデル「ブルーム(BLOOM)」の訓練、構築、実行によって約50トンの二酸化炭素が排出されたことを見い出した。
ルッチオーニの研究は、「大規模な機械学習(ML)モデルのカーボン・フットプリント分析として、これまでで最も徹底的かつ誠実で、事情に精通したものです」と、カーネギーメロン大学コンピューターサイエンス学部のエマ・ストルーベル助教授は昨年11月にMITテクノロジーレビューに語った。ストルーベル助教授は、AIシステムが気候に及ぼす影響に関する画期的な論文を2019年に執筆している。
ルッチオーニは、「私の手法を用いれば、人々がより多くの情報に基づいてAIを選択できるようになります」と述べ、AI言語モデルの二酸化炭素排出量をこれほど深く掘り下げて監査した人は他にいないと言う。彼女が作成を支援したツール「コード・カーボン(Code Carbon)」のダウンロード回数はすでに30万回を超えている。「こうしたAIモデルの環境影響を理解するのは、先回りして物事の効率を高めるうえで非情に重要です」とルッチオーニは語る。
(メリッサ・ヘイッキラ)