アルフセイン・ファウジは、ゲームをプレイする人工知能(AI)を使用して基礎的な計算を高速化するパイオニアだ。よく使われているアルゴリズムの小さな改善は、そのアルゴリズムを実行するすべてのデバイスにコスト削減と省エネルギーをもたらすため、大きな違いを生み出す。
しかし、人間の科学者たちが何十年も研究してきたコードのショートカットを見つけるのは難しい。ファウジの洞察の重要なポイントは、新しいアルゴリズムを発見する問題を一種のゲームとして扱い、その習得にディープマインドのゲームプレイAIである「アルファゼロ(AlphaZero)」を使用したことだ。
チェスのようなゲームで、アルファゼロは天文学的な数字の可能性を調べ上げ、勝利につながる可能性が最も高い手を選び出す。手順を連続的に並べて正しいアルゴリズムを作成するのは、ゲームに勝利するために手を選択するのと少々似ている。チェスと同じように、無数の可能性を調べ上げてゴールに到達するのだ。
ファウジらはアルファゼロの改造版を使用して、行列の乗算を高速化する方法を発見した。行列の乗算は、グラフィックスや物理学から機械学習そのものまでさまざまな分野でよく使用される、多くのコンピュータープログラムの中核に位置する数学の基本要素だ。アルファゼロが発見したアルゴリズムは人間が考案した従来の最高のアルゴリズムよりも高速で、50年間破られなかった記録を更新した。
グーグル・ディープマインドでは、ファウジの手法を使用して、1日に世界中で数兆回実行されている別の基礎的な計算法であるソートアルゴリズムの未発見のショートカットも発見した。「現在使用されている基本的なアルゴリズムの多くが現代コンピューターの時代が到来する前に、しかもそのほとんどが紙の上で発明されたことは驚きです」と、ファウジは言う。「機械学習を使用してそれを改良しようとするのは価値のあることです」。
(ウィル・ダグラス・ヘブン)