推進剤は、ロケットの打ち上げやエアバッグの作動、大口径の砲弾や銃弾の発射に使われるエネルギー物質の1つである。
一般的には、燃料、酸化剤、その他の原料を混ぜ合わせてスラリー状(どろっとした液体)にし、型に流し込んで硬化させて製造する。しかし、パデュー大学で機械工学を専門とするモニーク・マクレーン助教授(29)は、3Dプリントという新しい方法で推進剤を生産することで、推進剤の性能を微調整する方法の開発に取り組んでいる。
推進剤を層ごとに完成する3Dプリントによって、今までにない形状を持ち、よりきめ細かな層、従来とは異なる組成の高エネルギー材料の製造が可能になると期待されている。
この製法によって、推進剤の起爆感度や、時間の経過に伴う燃焼の仕方、エネルギー密度、推力や軌道に影響を与えるその他の特性をより適切に調整できるようになる可能性がある。同様の技術によって、爆破、採掘、軍用爆弾に使用される爆薬の性能も向上させられる。
言うまでもなく、そのような材料の製造は危険を伴う。圧力、温度、製造過程の動作条件を注意深く制御する必要がある。3Dプリンターの細いノズルから、濃密で粘着性のある粘土状の物質を押し出すのも厄介だ。このような難題を鑑み、3Dプリントを使用した製法の対象はこれまで、主にエネルギー密度が比較的低い、つまり爆発力や推進力の低い材料に限られていた。
しかし、マクレーン助教授はいくつかの点でこの分野の前進に貢献した。同助教授は、3Dプリンターのノズルから粘性材料をより迅速に噴出するために、ノズル先端を高速振動させるという新しい技術をいち早く応用した人物の1人である。この方法によって、より高いエネルギー密度で固体ロケット推進剤のプリントが可能になった。また、製造された材料の特性を評価する新しい技術を開発したのも同助教授だ。
米国防総省の陸軍研究所(Army Research Lab)と米国のいくつかの国立研究所では、これらの技術の一部の使用や評価を間もなく始める予定だ。研究がどのような目的で使われるかについて、マクレーン助教授はコメントできない。しかし、自身が開発に協力している手法によって、ロケットの加速度や飛距離をより細かく調整することが可能になったり、他の発射体の射程距離を延ばしたりできるかもしれない、と同助教授は話す。
(ジェームス・テンプル)