トンチャオ・リウは、従来よりも充電できる回数が多く、製造コストが低いリチウム電池を開発した。電池の寿命とコストは電気自動車にとって大きな問題であるため、リウの取り組みは電気自動車の普及に大いに役立つだろう。
電池のサイクル寿命(電池が機能しなくなるまでに充放電できる回数)を改善することは大きな難題だ。驚くべきことにこれまで研究者らの間では、電池が最終的に故障する原因について合意できる説明はなかった。
米国アルゴンヌ国立研究所で助手を務める化学者であるリウは、新たな原因分析システムを構築することでこの疑問を解決し、学説を統一した。リチウム電池の故障のほとんどはカソード(正極、電池から電流が流れ出る電極)で起こり、充放電サイクルのたびに内部の部品が膨張・収縮することに伴う物理的なひずみが原因であることを突き止めたのである。
リウは次に、ペロブスカイトと呼ばれる素材を使い、ひずみに対する耐久性を上げた新たな正極構造を発明した。この技術革新により、リウが開発した電池の寿命は3倍に伸び、製造コストは約25%削減され、素材にコバルトを使用する必要もなくなった。既存のリチウム電池に広く使用されているコバルトは、主にコンゴ民主共和国とロシアで採掘されており、労働者が搾取され、環境に対する負荷も相当なものだ。
リウのブレークスルーは特に、コバルトの使用量を削減することに関心のある企業の興味を集めた。同時に、彼は長期的な野望として、ニッケルなど他の問題のある素材を不要にすること、そしてそもそも物理的なひずみの影響を受けないまったく新しい電池の化学的原理を発明することを目指している。
(ラス・ジャスカリアン)