コートニー・ヤング(32)が米国の高校3年生だった頃、2歳の甥クリストファーが致死的な遺伝性疾患のデュシェンヌ型筋ジストロフィーだと診断された。ヤング一家はこの診断にショックを受け、治療法を探すヤングの旅が始まった。そして、ヤングの最近の遺伝子編集の取り組みは、ここ数十年で極めて有望な進歩の1つになっている。
筋ジストロフィーは、健康な筋肉を形成・維持するために必要なタンパク質の生成が遺伝子変異により妨げられることにより起こる。マイアジェネ・バイオ(MyoGene Bio)の共同創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるヤングのチームは、CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)を使うことで、患者のDNAを変化させ、必要なタンパク質を作る能力を回復させることができる。
ヤングCEOらの手法では、遺伝子が変異している部位を狙って除去することができ、その後、DNAは自然修復が可能となる。CRISPR-Cas9は遺伝子変異への対処法として10年前から用いられてきたが、ヤングCEOの研究は限界を押し広げ、これまで考えられてきたよりもはるかに大きな範囲の除去が可能だと証明した。
「現在承認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療は、下流の副作用への対処であったり、有効性が薄かったりするものです。私たちのアプローチは、疾患の根本原因をターゲットにしたものです」。
ヤングCEOは、CRISPRを無害なウイルスで包み、血管内に注入できるようにする構想を描いている。そうすればウイルスは筋肉細胞に入り込み、遺伝子編集技術により患者のDNAに働きかけることができる。ヤングCEOは臨床試験が完了するにはあと2年はかかると考えている。
「時間は刻々と過ぎていきます。この治療法が承認されれば、毎年1万人もの新規デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者の役に立てる可能性があります」。
(キャスリン・マイルズ)