
感染力の強い呼吸器感染症を引き起こす細菌が、本物に近い人工軟組織を作成するためのカギになり得るのだろうか。ダニエル・マイ(34)は、あり得ると考えている。スタンフォード大学のマイ助教授(化学工学)の研究室では、百日咳菌、もしくは百日咳菌由来のタンパク質を使って、ヒトの皮膚や筋肉のように機能する新しい素材のバイオエンジニアリング(生体工学)に取り組んでいる。
人工素材製造企業のロジャーズ・コーポレーション(Rogers Corporation)におけるインターンシップ時代、マイ助教授は鎖状に結合した大きな分子で、多くの種類の有機体における構成要素として機能するタンパク質ベースのポリマーに取り組み始めた。同助教授はすぐに、この研究に夢中になった。
マイ同助教授は天然のタンパク質を特定し、研究室で再現することで、ヒトの筋肉の特性および機能、特に伸縮する能力を模倣するバイオポリマー(生体高分子)を作った。こうした特性はこれまでの人工組織では再現が困難だった。百日咳菌のような細菌は、反復性が高いタンパク質配列を持ち、模倣しやすいため完璧なモデルなのだと同助教授は言う。
「天然のタンパク質は、美しい分子配列と驚くべき機能により、厳しい環境を数十億年も生き抜いてきました。そうした機能を活用して、人工素材を作ることができるのです」。
マイ助教授は、ソフト・ロボット工学、再生医療、持続可能な方法で作られた動物を使わない肉など、新バイオポリマーのさまざまな用途を構想している。
(キャスリン・マイルズ)
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