過去30年間、医療におけるロボットの役割は重要性を増してきた。手術室でよく用いられるプログラム可能なロボット・デバイスは、精度向上、切開部縮小、治癒時間短縮などに役立っている。しかし、こうしたロボットは主にカメラや手術器具に接続された機械アームで構成されており、特定の手順の処置しか実施できない。
スタンフォード大学の機械工学助教授である33歳のレニー・チャオは、この状況を変えたいと考えている。同助教授の研究室では、より柔軟な動きを模倣する小型ロボットを開発した。古代の折り紙技術にヒントを得たミリメートル・スケールのロボットは、タコの腕や尺取虫のような強さと柔軟性を兼ね備えている。
「人体には骨がありますが、実は人体のほとんどは柔らかい組織で出来ています。生物医学デバイスは、そのような柔らかい組織に対応できるものでなければなりません」とチャオ助教授は言う。「自然の中にあるものは、すでに最適化されています。だから自然の中にあるものから着想を得て、それを再現することは理にかなっているのです」。
建築家のビルタ・クレスリングは、折り畳み構造を研究してきた。チャオ助教授は、クレスリングが最初に開発したパターンを利用して、安定性を維持したままねじったり、座屈したりできる小さな円筒形ロボットを開発した。ロボットに磁性体の小型粒子を埋め込み、磁場を使ってデバイスを操縦する。
小型で器用なこのボットは、血栓を砕いたり、特定部位に薬剤を送り込んだり、体内構造の画像を提供したりできる有用なツールになっている。チャオ助教授の研究室は現在、生分解性素材の実験を実施している。この素材を使ったロボットは、役目を終えた後、体内で安全に分解される。
「今後は医師と綿密に連携し、本当に必要な臨床ニーズを見つけていきます」とチャオ助教授は話す。「私たちは、机上の問題を解決したいわけではありません。私たちの専門知識を活かして、特定の課題に取り組む医師を支援したいのです」。
(キャサリン・マイルズ)
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