「生きた組織から作られるロボット」と聞くと、まるでSFの世界の話のようだ。しかし、33歳のビクトリア・ウェブスター・ウッドは、ロボット工学を環境により優しいものにするため、さまざまな生体素材からロボットを構築している。
ロボットは現在、海洋監視や農作物の収穫支援など、さまざまな自然環境に配備されている。しかし多くの場合、有害な金属で出来ている。より柔らかい生分解性素材を使用しようとする過去の試みは、失敗に終わったものが多い。大きな課題は、柔らかいロボットの脚やアームを、硬い本体にいかに取り付けるかということだ。カーネギーメロン大学の機械工学准教授であるウェブスター・ウッドは、「繋ぎとなる部分に破れや欠陥が発生する可能性が高くなり、ロボットがバラバラになりかねません」と言う。
対策を考えていたウェブスター・ウッド准教授は、筋肉と骨を結びつける組織である腱からヒントを得た。同准教授のチームは新しい3Dプリンターを使用し、海藻などの素材で作られた柔らかい糸に、コラーゲンなどの強い繊維を埋め込むことで、生物由来のアクチュエーター(ロボットを動かす部品)を作り出した。この腱のようなアクチュエーターを、柔らかいロボットの手足や硬い本体に取り付けることで、機械的故障の可能性を減らすことができるのだ。
バイオハイブリッド・ロボット工学の新分野におけるウェブスター・ウッド准教授の功績は、この革新技術だけではない。数多い偉業には、「ウミウシの筋肉から作られた脚をもつボット構築」や「生きた素材から作られたロボットが外部制御なしにどう動作するかを研究するための、動物の神経系のモデル化」などがある。目標は、ロボットをもっと動物に近づけることだ。動物を模倣した設計であることが多いのはそのためだ。
(ジョナサン・W・ローゼン)