シバニ・トーレス(ペトラ)

Shivani Torres シバニ・トーレス(ペトラ)

ジェットエンジンの熱を利用してどんな岩石でも貫通できる切断トーチを開発。送電網を地下に埋設する際に不可欠な技術として普及を目指す。 by MIT Technology Review Editors2023.10.18

シバニ・トーレスは、常に自分を「生産者」であるとみなしてきた。実践的なアプローチにより、発破や掘削といった物理的手法ではなく、熱を利用して岩盤を掘り抜くプロセスを開発し、ペトラ(Petra)の共同創業者兼最高製品責任者として、ジェットエンジンから発生する熱を利用して岩石を粉砕するロボットの研究開発を主導してきた。

「非接触掘削」というアイデアは、従来の掘削に代わる手法として科学者が核反応やプラズマの実験を始めた1970年代に誕生した。しかし、いずれのアイディアも実現しなかった。スタンフォード大学の学生だったトーレスは、大学の金属ショップで働いたことがあり、ジェットエンジンを動力源とする小型トーチの有効性を目の当たりにしていた。

ペトラを立ち上げたトーレスは、「岩石にも同じ原理が応用できるのではないか」という仮説を立てた。高温に晒された岩石は膨張し、最終的に砕け散ると考えたのだ(彼女はこのプロセスを、冷たいガラス皿を高温のオーブンに入れる場合にたとえている)。トーレスらの研究チームは、ジェットエンジンと、トーレスが設計した特注のアフターバーナーを使用することで、周囲への影響を最小限に抑えつつ、どんなに硬い岩石でも貫通できる高性能の切断トーチを開発した。

従来の掘削手法に比べ、「安全・安価であるほか、バイオディーゼルを燃料にできるため、より持続可能な手法です」とトーレスは言う。

ペトラは、「自然災害や深刻化する暴風雨に対する脆弱性を減らすために、米国の時代遅れの送電網システムを地下に埋設する」という動きに不可欠な技術として、この切断トーチを売り出そうとしている。

(キャサリン・マイルズ)